何処までも愚直で飾らない、それでも彼等は『夢を見ている』ー
時速36kmの四人が語る、『オーバーグラウンド』でも『アンダーグラウンド』でも無い『中道』とは。
夢を見なくなったのはいつからだろうか。
環境が変わり、歳を重ね、現実を知る時なのか。はたまた、夢など鼻っから見れちゃいないのか。いや、子供の頃は誰もが多かれ少なかれ夢のような物を抱いていたと思う。
だが、先月号のインタビューでも言ったが夢を語る、夢を見るバンドは限りなく少なくなった気がする。現実を唄い、現実を憂い、現実に寄り添うバンドがもしかしたら今の有るべき『バンド像』なのかもしれない。正解なんてわからないとも思うけれど。
それでも時速36kmは、夢を見ている。
誰もが『青臭い』『現実味がない』と馬鹿にして吐き捨てた『夢』を彼等は今でも、多分きっとこれからも見続けるだろう。『まだ俺になる前の俺に。』と冠したミニアルバムを昨年リリースした彼等のインタビュー。今回はメンバー四人全員のその記録だ。
text&photo:オオ=スカ
仲川慎之介(vocal & guitar)
『そりゃあ、練習すりゃ良いんだけどさ。時間かけて修行すれば良いんだけど、俺はそれがやだったんだよね。その時間使って別のことやりたかったんだよ』 オギノ
大須賀:ツアーは今半分ぐらい終わったのか。
オギノ:今半分ぐらい終わった。計23本だね。全部で。
大須賀:前はどれくらい回ったの?
オギノ:前のツアーは7本ぐらい。
大須賀:そん時、開くん(guitar)は入ってたっけ。
オギノ:いた。加入して半年後ぐらい。
大須賀:じゃあ一年ちょっと経ったぐらいか。時速は元々石井君以外の三人でやってたわけじゃん。4人目を入れようって理由はなんだったの?サウンド面とか?
松本:それはオギノの発案でしょ。
オギノ:時速が結成したのが2016年12月で、その一年後に近松(下北沢近松)で企画をやって。その時のライブの演奏が気に食わなくて。主に俺が気に食わなかった。二人はそんな事なかったと思うんだけど。ライブの録音とかも今聞くとかなり恥ずかしいんだよ。単純に下手だし、唄も聞こえねーし、リズムも寄れてるし、勢いもそんなにないし、みたいな。まぁそっから練習して上手くなれば良い話なんだけど、その時まだ全員休学してなくて。だから、中々そんなに時間も取れなくて。
大須賀:え、何今全員休学してんの?
オギノ:してる、こいつ以外。で、練習もそんなに出来ないしどうしようってなった時に、だったら一人ギター入れてみれば、慎之介の唄ももっと前に出てくるだろうってのがあって。ギターはリードに任せて。
大須賀:唄にもっと専念させたいって事ね。
オギノ:そう。だから、手っ取り早いのは一人入れるのが良いなってなった。自分らの曲に自信はあったんだけど、このままじゃ燻る未来が見えたんだよね。バンドが。
大須賀:それで他の二人はどうだったの?もう一人を入れるって事に関して。
オギノ:慎ちゃんはスリーピースでやる事に拘りがあったんだよね。
慎之介:うん。本当に今考えるとガキみたいな理由なんだけど、三人でやってるバンドってかっこいいじゃん。憧れがあったんだよね(笑)好きなバンドってみんな三人だったから。自分がギター弾きたいってのもあったけど。
大須賀:そゆことね。松本は?
松本:俺もどちらかと言うと反対派で。今まで三人でやってたから、想像がつかない部分はあって。後、俺と慎之介で四人目入れたいって話聞いた時の帰りに話してたのが、オギノ以外に怒る人間増えるの嫌だって話はしてた(笑)
一同:(笑)
松本:オギノに怒られてる時点で結構シュンとするのに、もう一人そう言う奴が増えたら俺ら無理だ…ってなってたけど、実際入ってみたらオギノに怒られる奴がもう一人増えただけで(笑)
大須賀:(笑)じゃあオギノとしては三人での演奏に対して、なんか違うなって言う不満があったんだ?
オギノ:限界を感じた。
大須賀:はえーな(笑)
オギノ:練習すりゃ良いんだけどさ。時間かけて修行すれば良いんだけど、俺はそれが嫌だったんだよね。その時間使ってもっと別のことやりたかったんだよ。
大須賀:でも、それはオギノが同時期にHighlight(当時オギノがベースとして所属していた)に居たってのもあったんじゃん?
オギノ:それもあった。経験則としてやれなくないなってのもあったし。あと、すげー下世話な話すると、練習代もノルマ代も四分割に出来るなってのもあったな(笑)
松本:て言うじゃん!でも、こいつ(石井)が入ってから急にノルマとか無くなって、こいつ全然負担してないんだよ(笑)
石井:そうなんだよね(笑)
大須賀:石井君と三人はどう言う関係だったの?
オギノ:全員おんなじ大学で。俺らが三人でライブとかやってた頃から気に入ってくれてて。スタッフみたいなのやってくれてたんだよね。物販とか制作とかの。
松本:ライブやりたてぐらいの頃から見てくれてて。
オギノ:四人目入れるって話二人にした時に、じゃあ誰にするのって聞かれた時に、こいつ(石井)しか居ねーだろってのはあったし。
大須賀:じゃあまぁ、加入自体の流れとしては自然な流れではあったんだ。ギターは時速誘われる前からやってたの?
石井:結構もうずっとやってた。
大須賀:そうなんや。みんなって今いくつぐらいだっけか。
松本:年齢は俺だけが今年で22歳になるんで、みんなの二個下ですね。
大須賀:サークルとかで一緒にバンド組んでたりはした?
オギノ:した。三人でやった事は無かったけど。
松本:それこそ、俺はバンドやらない?って言われるまでは慎之介とは面識無くて。慎之介だけ別のサークルだったんで。だから、最初の頃は慎之介さんって呼んでましたよ。秒で無くなりましたけど(笑)
大須賀:それで石井君が入って、初ライブしたのは?
石井:去年の2月ぐらい?
オギノ:確か。普通のブッキングライブで。金子さん(下北沢DAISY BARブッキング。時速36kmが現在所属しているレーベルの代表も務める)が居たってのもあったし。
大須賀:てかさっき休学してるって言ったけど、お前らって今年卒業出来んの?
オギノ:出来ない出来ない。
大須賀:ひぇー!
慎之介:そんな怖いリアクションされると怖くなっちゃうから辞めて!(笑)
大須賀:金子さんの話出てきたからしようと思うんだけど、出会いはいつ頃だったの?
オギノ:都内でライブしだして、二本目か三本目のライブが金子さんのブッキングで。そこで出会った。
大須賀:じゃあ、まだやり立ての頃だ。それこそ、お客さんが急に増え始めたのっていつぐらいからなんだ?
松本:2018年になってからだよね。
オギノ:うん。それこそ初めての企画終えてから、あれ?って言うのはあった。
松本:対バンの相手とかもカッコいいバンドに恵まれたりし始めて。
大須賀:対バンって同世代が多かった?
オギノ:歳下が多かった。俺らがバンド始めた時期が大学三年の終わりの歳だから、就活をし始める段階だったのよ。だからそもそも、ライブハウスに同い年があんまり居なくて。高校生とかからガンガンバンドやってる奴らはもう売れ始めてたし。大学生でやってるやつは就職とかで解散してたりしてみたいな。同い年は本当に居なかった。未だにそんなに居ないし。
大須賀:未だに居ないの?
オギノ:KOTORIぐらい。あと、Haikiとか。
大須賀:KOTORIってそんなに若いんだ。
松本:ついでに、結成の経緯とか話したら?
オギノ:でも、聴きたいの?お前
大須賀:良いから話せよ(笑)
慎之介:発案はオギノだったね。
オギノ:軽音サークルと別にジャズ研があって、そこで知り合って。軽音サークルは一緒じゃ無かったから。ロックもやりたいけどジャズもやりたいみたいな感じで。
大須賀:ジャズやりたかったの!?
慎之介:いや…カッコつけてただけだよ(笑)
オギノ:で、その当時前進バンドみたいなのを組んでたの。慎之介と俺と別にメンバーとボーカルが居て、慎之介はリードギターやってて。でも、死ぬほどダサくて1年ぐらいで解散して。で、俺がまたバンドやりたいなーと思って。三年の終わりぐらいに。慎之介は留年が決まっててバンドやるならコイツは絶対居て欲しいってのはあったから誘って。
慎之介:いや、俺はまだ留年は決まってなかったよ。決まってない留年は。
大須賀:全然華々しくないじゃん…お前ら。
慎之介:俺はまだギリギリまともに生きようとしてたんだよ…。
一同:(笑)
オギノ:で、慎之介誘ったタイミングでコイツ(松本)が大学に入ってきて誘ったんだよね。聴いてる音楽の趣味も合ったし。
松本:二人には就職ってリミットがあったから、一年間やってもし何も手応えが無かったら辞めよう、って話はしてて。
大須賀:なんか妙に切羽詰まってんな。
オギノ:そうそう(笑)で、丁度のその結成の一年後に近松で企画やって。その翌日くらいに金子さんに「ウチからCD出さない?」って話が来たのね。他にもそういう話貰ったり。その時に、国から法人登録されてるとこ二社から声掛かったから続けても良いのかなぁ、って思って辞めなかった。
大須賀:今は金子さんの所に所属してるの?
オギノ:所属はしてない。
松本:ベチャベチャに唾つけられてる状態です(笑)
大須賀:…これ載せたくねぇなぁ。
一同:(笑)
オギノテツ(bass & Throat)
『オーバーグラウンドもアンダーグラウンドも好きだけど、極端な所に居るバンドに俺らはなりたくないんだよ。どっちか片方って言う在り方じゃなくて丁度ど真ん中を、『中道』を行きたいんだよね』 オギノ
大須賀:実は今回の件あるまでMVの曲とかしかちゃんと聞いたことなくて。で、改めて聴いてみたんだけど、1枚目の三人時代の音源を聴いて思ったのは”憧れ”って言うものを色濃く感じて。何かに憧れてバンドをやっているな、って言うのを良くも悪くも感じて。
オギノ:あー、強いね。
大須賀:でも、四人になって出した2枚目(mini album 「まだ俺になる前の俺に。」)はそこからちょっと離れた気がして。歌詞とかも。良い意味で若さが無くなったというか。『憧れが憧れのままでいいのか?』っていう感じがして。あれはレコーディングとかtoldの穂積さんにやって貰ったんだっけ?
オギノ:そう。金子さんが金は出すからエンジニアとか好きな人に決めていいよって言われて。で、俺達めちゃめちゃtold好きだったし。それでお願いして。
大須賀:どれくらいの期間で撮ったの?
オギノ:ボーカル録り含めたら計11日間ぐらい掛かったかなぁ。
大須賀:そんなに掛かったんか!
松本:学校に通っててみたいなのもあって。五月ぐらいに三曲録って。八月に残りの三曲録って。レコーディングスタジオでみんなで録るって言うのは実質二日間ぐらいなんですけど、ちょこちょこしたギターの重ねとかで結局それぐらいになっちゃいましたね。
大須賀:そうなんや。2枚目の方が1枚目に比べて、歌詞が一番変わった感じはしてさ。日々の事を唄った曲が増えたというか。心境の変化とかあった?
オギノ:俺はめちゃめちゃあったかなぁ。それこそ金子さんの話があって、俺達イケるかも?って思えた所もあったし。日常で起こってる事もちゃんとモノにしてやりたい、使ってやりたいっていう気持ちが出て来たんだよね。生活とか暮らしの事とか。
大須賀:自分らの音楽をちゃんと売り物にしたいなっていう感覚が出て来たワケだ。
慎之介:えー、俺何も無いな…。何だったらもう、俺元からこんな感じというか。オギノは結構、憧れ感の強い歌詞を書いてたけど俺はずっとダメだなー自分っていう感じの歌詞を書いてたな、と思う。
オギノ:それこそ、アレじゃない?『ドライビングフォース』(時速36kmの1枚目。三人時代に録られたものでミックス等もオギノが務める)とかに入ってるお前の曲とかさ、曲とか作ったのはそれこそバンド初めてからだけど、歌詞とかはバンドをやる前の感情とか暮らしの話だったじゃん。逆に『まだ俺になる前の俺に。』(石井が加入してからの2枚目。彼等にとって初めての流通盤となった)のお前の曲とかはバンドを始めてからの、それこそ暮らしとかの歌詞が増えたって言うか。1枚目は過去の事だよね。『ジンライム』とかさ。
慎之介:あー、たしかに。日常は日常だけどバンドをやってる事を歌詞にし始めたのは『まだ俺になる前の俺に。』からかも。
大須賀:まぁその感じは色濃く出たのかなって気はした。後、歌詞とかとは全く別にさ、1枚目と2枚目の圧倒的な違いってまずメンバーが増えたって面があると思うんだけど。さっきも話したけど、オギノ的に4人になった事で三人で音楽的に充足し切れないなって所は無くなったの?
オギノ:うん。具体的に言うと、練習してる時間が嫌だって理由で入れたから。別に基礎値は上がってないし全然下手なんだけど。でも、パッと聞いて4人の方が音が多いわけじゃん。だから、誤魔化しが効くんだよね。
大須賀:…お前本当にインタビュー慣れてねぇな…。
一同:(笑)
オギノ:まぁ誤魔化すって言うと聞こえ方悪いけど、単純に演奏があまりに拙くて曲の良さが伝わらないのが凄い嫌で。そこは無くなって曲がより伝わるようにはなったとは思う。
大須賀:でも、ライブはしたかったんだ。宅録とかでやるとかじゃなくて。三人時代の時から。そういう選択も無いわけじゃないじゃん。
オギノ:うん。
大須賀:時速について思うんだけど、ベースであるオギノがバンドの舵を取って引っ張って行くって形態って他の今のバンドには見ない感じだなとは思ってて。だからこその歪さってのがあると思うんだけど。で、今回ツアー回って同世代とかとやったりしてさ、それこそ唄モノって呼ばれるバンドとかも多かったと思うんだけど。でも、時速って100%唄モノって感じではないというか。それこそ、Dr.downerのようなもっとオルタナティブなバンドとかともやりたがるし、やれるじゃない?両方とやってみて、それについてはどう感じてるのかなって。
オギノ:どっちも好きなんだよね。でも、俺達としてはどっちにも行きたくなくて。オーバーグラウンドもアンダーグラウンドも好きだけど、極端な所に居るバンドに俺らはなりたくないんだよ。どっちか片方って言う在り方じゃなくて丁度ど真ん中を、『中道』を行きたいんだよね。
大須賀:そう言う話とかはメンバーと普段からするの?こう在りたいね、って話とか。
慎之介:今まではあんまりしなかったかなぁ。今回のツアー中に初めてした、って感じ。
オギノ:ライブの内容とかにまだ変化が出てるわけじゃないけど、心境は俺は変わってる。メンバーがどうかはわからないけど。
大須賀:唄モノのバンドで怒りを核とするバンドって居ない気がして。もっとみんな楽しもうって感じでライブをやってるなぁって思う。でも、オギノには前に言ったけど時速は割と内向きなライブもしてるなってイメージで。見てくれてる人とか関係ないってライブしたりもするじゃない?でも、逆のライブ、見てくれてる人達に向けてやっている時もあると思うし。そこに関して時速としてはこれで良いのかってなってるのか、まだ悩んでる途中なのか。
オギノ:まだ考えてる途中かなぁ。それは。
大須賀:開君と松本はどういう感じなの?そこは。オギノと慎之介はど真ん中で在りたい訳じゃない?内向きでやりたいのか、それとも外向きで在りたいのか。どう言うライブしたい?
石井:うーん、俺は二人が振り切った方に行きたいなってのがあって。だから、二人が微妙なラインにいると上手く行かない時が多いかな。俺はバンドがかっこよく見えたらいいかなって思う。
松本:俺は割と内向きなんですよね。てか、そうなっちゃうし、なりがちで。それこそ前三人の勢いに俺がついていけないってのも割とあったりして。
大須賀:それは演奏面?それとも心境面?
松本:心境面かも。外向きとかの話になると、あんまりお客さんに対してなんかやったろって言うのは考えた事ないかもしれないっすね。お客さんを上げたろってより、メンバーを上げさせたろっていう気持ちの方が強くて。お客さんが上がってるから俺も上がるってのはあんまり無いかもしれないです。
オギノ:あーでも、俺も松本が上がってる時は上がるかも。一番こいつがテンション上がり辛いから、こいつが上がってる時はめちゃくちゃ上がる。
慎之介:それはそうだね。
松本:そうなの?(笑)
オギノ:それはそうだよ。
石井”ウィル”開(guitar & chorus)
『自分が楽しいってのもあったし、三人が楽しんでくれてるんだな、ってのがわかって。入って良かったな、と思えたんだよね』石井
大須賀:今迄インタビューしてきたバンドだと、ニトロデイとかはサウンドとか曲とかでこー言う事がやりたいんだろうなってのは伝わってくるのよ、明確に。時速は伝わっては来るんだけど、まだこいつら自身悩んでるんだなっていう感じもして。でもそれをお客さん見にきてる所もあると思うんだよね。バンドが葛藤している様というか。
オギノ:多分俺と慎之介がさっき言った『真ん中行きたい』って言うのは、バンド始めたてのバンドがいる所なんだよね。どっちにしようかな?どういう方向性にしようかな?って言うか。方向性も何も決まってない、どういうバンドになりたいとかも決まってないって言う。でもこの前の話し合いの時に俺としてはここに居たい、居続けたい、ここでめちゃくちゃ強いバンドになりたいって、なったんだよ。だから、俺たちとしては『ど真ん中』『中道』で在りたいって言う意識が決まってる。でも、周りから見たら中途半端なバンドに見られても仕方ないかも、って思う時はある。
大須賀:俺とかはさ、バンドのサウンド感とか曲とかは時速はわかりやすい形でやってると思うんだけど、それってやりすぎると洒落臭えなって思っちゃうのね。でも、時速はそのギリギリのラインに立ってて。それは歌詞はデカイと思って。歌詞で重みが付いてるというか。それって狙ってやってた?俺達は俺達にしか描けない歌詞があるなって思ってたつーかさ。
オギノ:感じたまま書いてたのが、丁度そういう作用を生み出してくれてたんだよね。収まりのいい所に落とし込んでくれてたというか。さっきの話にも繋がるけど、それが出来るなら逆に現状のどっちもやれてる現状でめちゃくちゃ強くなりたいってなったんだよね。
大須賀:それは最近思ったの?
オギノ:最近。俺と慎之介は外向きのライブも内向きのライブもあっていいじゃんって思ってて。日によって、曲によって、変わってもいいじゃん。メンバー全員が向いてる方向が一緒であればどうあってもいいじゃん、って思うんだよね。例えば1日前と全く違う方向に向いてたとしても、四人が同じ方向向いてるならそれは迷ってる訳じゃないんじゃないか?って思ってきて。
大須賀:そうかもな。話聞いてるとやっぱり三人時代は納得行ってないイメージのまま進んでたつーか。
慎之介:納得いってねぇ、みたいなのは結構あったね。
大須賀:逆に今四人になってからはしっかり着実に納得しながら進んでるイメージというか。
慎之介:楽しくライブする頻度が増えたね。もしかしたら、三人の時にライブやってて楽しい!って思えたこと全くなかったかも。
石井:え?まじか。
慎之介:三人時代は俺らは負のエネルギーだけでやってくバンドなんだな、って思ってたもん。
大須賀:そうなんだ。そこら辺は石井君的にどうなの?俺が変えてやる!ってぐらいの感じなのか。
石井:いや、そんな内情知らなかったから。スタッフやってた期間も一ヶ月ぐらいしか無くて。それを察する暇もなくて。
大須賀:元々時速を客としてフロアから見てたわけじゃん。今はその見てたステージに立ってるわけじゃん、そこに入る抵抗とかはあったの?
石井:やっぱりあったかなぁ。三人でやってて、俺は三人でやってる事にしっくり来てたから。三人でやってくんだろうなとも思ってたし。だから、俺が入って序盤のサポート二、三回目の時のライブが結構怖くて。オギノはああ言ってるけど、果たして俺は入って良かったのか?って言う気持ちになっちゃってた部分はあった。
大須賀:それが無くなったって言うか、自分も時速36kmのメンバーだって思えた時はいつだったん?
石井:うーん、四人になって良かったなって思った瞬間は初回のNEW LINK!!(下北沢のライブハウスの若手ブッカー五人主催のサーキットフェス)出た時に俺のアンプの音が全然出なくなっちゃって。ライブの半分くらい音出なくなっちゃったんだよね。
松本:二曲目ぐらいで消えて、その後スタッフの人がめちゃくちゃ頑張ってくれてたんですけど治らなくて。その後、戻るまで二曲ぐらい三人でやったんですよね。
石井:そうそう。で、やっと最後かな、五曲目ぐらいにやっと治って。一番最後に『夢を見ている』をやったんだけど、その時に全員がぶっ壊れライブみたいな感じになって。うわー、楽しいわ!って感じの。その時に『入って良かったな』って思えた。
大須賀:あ、そん時に思ったんだ?(笑)
一同:(笑)
石井:自分が楽しいってのもあったし、三人が楽しんでくれてるんだな、ってのがわかって。入って良かったな、と思えたんだよね。
大須賀:そうだよね。三人でライブしてる状態と、四人でライブしてる状態を両方経験した上で、みんな楽しんでるんだもんな、四人の方を。
松本:あの日散々だったよね。ギターは音出なくなるし、こいつ(慎之介)のストラップ千切れるし。ギター投げ捨ててピンボーカルみたいになってて(笑)
慎之介:あれも楽しさ故だったなぁ。
大須賀:石井君としてはやっぱりそれでも最初は怖かったんだ?
石井:怖かった怖かった。あんま言ってなかったけど。
オギノ:怖いだろうなとは思ってたけど(笑)まぁ流石に四人でスタジオ入るってぐらいには、俺以外の二人も納得してたと思うけど。
石井:いやでも、なんかオギノがウチの頭ってのは三人の時からわかってたから。オギノはこう言ってるけど、他の二人はどうなんだろうなってのはあったよ。
松本:俺ら二人から絶大な反発とかあると思ってた?(笑)
石井:まぁまぁ(笑)
大須賀:オギノ以外、全員ふわふわしてるからな現状(笑)
松本ヒデアキ(drum & chorus)
『こんな綺麗事がまかり通る世界じゃないってのはわかってるけど、出来た物を出来たように出せばいいじゃんかって思う。それが俺らのやりたい事なんだったら』 慎之介
大須賀:今回ツアー回って来て同世代と色々やったと思うんだけど、こう言うバンドと仲良くなれるんだなとか、逆にこう言うバンドとは仲良くなれないな、とか。自分らの中の『戦友』って呼べるバンドって居る?
オギノ:居る。
大須賀:だれ?
オギノ・慎之介:NOWEATHER。
大須賀:あー、NOWEATHERか。
オギノ:俺らはあいつらは絶対に武道館やれるバンドだと思ってるから。
大須賀:界隈とか、そう言う話も出て来ると思うんだけど、そう言うの関しては勝手にやってろって感じ?
オギノ:あんまり興味ない。あーでも、三日前ぐらいに俺ら三人(オギノ、慎之介、石井)は全員95年生まれなんだけど、この世代で面白いことできねぇかなって言う話はしたね。
大須賀:例えばだれ?
オギノ:NOWEATHERはもちろんで。初めの方でも言ったけど、KOTORIとHaiki。ひいてはBearwearとか。オーバーグラウンドなところで言うとosageとかだね。そこら辺は信頼できるなって思う。例えばそいつらの音源なりが出たらちゃんと買うし。
大須賀:そこら辺なのか。じゃあ、時速としては同世代と戦っていきたいのか、それとも先輩と戦っていきたいのか、それはどうなん?今後の時速の形というか。
慎之介:うーん、俺はあんまりvs同世代って感じで考えたことはないなぁ。先輩の場合はあるけど。だから、先輩とやりあっていきたいかな。
オギノ:そうね。今後の話だったら、もっと上手くなりたい。
大須賀:それは当たり前だろ(笑)
オギノ:いやでもそれに尽きるって言うか。上手くなればやれる事も増えるし。選択肢が増えるわけじゃない?曲作りにおいてはもっとオルタナティブにやっていきたいんだよね。演奏は俺たちが好きだった、オルタナティブなバンドの感じもしつつ、曲の核になってる弾き語りとかは今のままフォークの感じがいいと言うか。
大須賀:弾き語りのフォークの感じをオルタナに昇華したい?
オギノ:そうそう。だから、所謂オルタナに振り切ってる先輩方、先輩バンドとはまだやりたくないんだよね。実力的にボコボコにされるのはわかってるし、ちゃんと闘うからには爪痕残したいから。もっとライブ力、演奏力をつけてからやりたい。もっと出来ると思うんだよな。
大須賀:でも、Dr.downerとはツーマンしたじゃん?
オギノ:なんて言うのかな、俺らの中でdownerはオルタナと唄モノとかの『中道』なんだよね。だから、とても理想的というか。悪い意味で無く『振り切れてないど真ん中』のバンドだと思う。
慎之介:そうだね。ある種の俺らの理想に近くて。downerのやってるバンドの形で、デカくなっていきたいって言うか。
大須賀:明確なジャンルに分類されない、『時速36km』って言うジャンルでデカくなりたいわけか。
慎之介:分類されたくないって言うか、わざわざ分類されてる方に行く事はねぇかなって言うか。自分らのやりたい事が『どっちつかずの中道』なら、そのまま行けばいいと思う。こんな綺麗事がまかり通る世界じゃないってのはわかってるけど、出来た物を出来たように出せばいいじゃんかって思う。それが俺らのやりたい事なんだったら。
オギノ:そうだな。だから、曲作ってる時にオルタナティブじゃねぇな、ちげぇ、って話はしないかな。自然にそう言う方向に進んで行ってくれれば、つーかさ。別にこれ!って言うものにはなりたく無いんだよね。『何か』になろうとは思ってない。
大須賀:他の二人はどうなの?今後の時速について。個人的に今の時速にとって、開くんの存在ってかなりデカイなってのはあったりするんだけど。
石井:それはなんで?
大須賀:三人時代に対バンした時も、今回三人時代の音源聴いても思ったけど、やっぱり少し『なよっている』というか。そこが四人になってゴツくなった気がして。それは開くんの存在はでかいなって。
石井:うーん、それは俺以外の三人は似たようなものを聴いてるんだけど俺はもっとオーバーグラウンドなものを聴いてて。例えば、俺一番好きなバンドってエルレガーデンなんだけどそう言うものに影響されてるし、出てるかもってのはあるかも…っすね。他の三人にはない部分と言うか。
大須賀:今後どうなっていきたいとか、そういうのはあるの?
石井:俺は結構ずっと言ってるんだけど、こーいうバンドになりたい!とかって理想は無くて。俺の理想はバンドでデッカくなって今の四人で美味しいご飯が食べたいって事しかないかもしれない。ずっと。
大須賀:そうなのか(笑)なんかオギノと慎之介はやっぱりフロントマンって感じなんだけど、その開くんのプレイヤー感って言うか、少し違うモノの見方の奴がフロントにいるのはすげーデカイのかもな。松本はどうなん?自分が時速でやりたい事って言うか。
松本:うーんと、ドラム的な話になるんですけど。オルタナティブなモノも少しぐらいは聴いてはいるんですけど、演奏的な面で言ったらそういうジャンルへの素養ってのは今の俺には全く無くて。パンクとかメロコアとかそういう自分が好きだったものを意識的に使ってるんですけど、今後はもっとそのオルタナティブ的な側面もドラムに持ち込んでいきたいなって思ってるんですよね。
大須賀:それは心境の変化とかあるの?
松本:そういうバンドや人達に出逢ったってのが大きいですかね。例えば、toldの穂積さんとか。対バンだったらHaikiとか。それこそバンドやるまでオルタナとされてる物に触れる機会なくて。Haikiの話をすると対バン見て、こういう事やりてぇ!ってなったのはHaikiだけなんですよね。憧れると言うか。この前、オギノが今後俺らどうする?って話になった時に、さっきのオルタナティブに進んで行きたいって話が出てきて『それだ!』ってなったんですよ。だから、もっとオルタナティブになって行きたいですかね。俺も。
大須賀:なんかアレだな、本当に『まだ俺になる前の俺に。』って感じなんだな、お前ら。それこそ、また開くんの話になるけど『三人のバンド』にギターが1人入ったってよりは開くんが入ってやっとバンドの完成されて行く方向が見えてきてって感じたのね。で、1枚目と2枚目でそれをやったわけじゃない?だから、次はどうするの?ってのはあるよ。音源として。四人がどう進んで行くのかって言う。
オギノ:俺はピアノとか入れたいんだよね。女性コーラスとか。もっと色んな事したいんだよね。
大須賀:トータルすると、なんかオギノ以外の三人が変わるとまたなんかバンドが変わりそうだな、楽しみだわ。
オギノ:そうだね。
時速36km
2016年末結成
アーバン軟弱4ピースロックバンド
Vocal&Guitar 仲川慎之介
Bass&Throat オギノテツ
Drum&Chorus 松本ヒデアキ
Guitar&Chorus 石井”ウィル”開
レペゼン江古
Official Site:https://36kmperhour.jimdo.com