Vol.6

結成から3年目にして、オオ=スカ(Vo&G)ひとりのバンドとなってしまったTeenager Kick Ass。しばらくは足元を固める時期なのかと思いきや、サポートを加えたバンドは連日のライヴ活動を止めることなく、また、6月28日にはサード・ミニアルバム『ウタトイノチ』を配信リリース。さらには事務所からの離脱、当ウェブサイトで始まったインタビュー企画「BOY」の存在などもあり、今のオオ=スカが一体何をやろうとしているのか、バンドマンとしてどこに向かっているのか、正直わからないところがあった。これは『ウタトイノチ』のリリースに伴うインタビュー。ただ、作品の内容というより、今のオオ=スカの脳内が知りたかった。だから、どこまでも正直に話し合った。

text:石井恵梨子
photo:服部健太郎

一一これまでの流れをおさらいすると、最初の全国流通盤が出たのが2018年の3月。同時に初代ベースが抜けてしまいました。

オオ=スカ:はい。実はその前に一枚、会場限定の自主盤があるんですけど。2枚目、いざ流通盤で出そうって話になった時に「このタイミングしかないね」って感じで脱退して。もともと「ほんとに人生考えたら彼が選ぶのは音楽じゃないのかな?」っていう気はしてたんですよ。彼もそういうこと言ってたし。

一一そのあとサポートで入ったベーシストが正式メンバーとなって。やっと3人で行くのかと思った矢先、いきなり2人とも抜けてしまう。

オオ=スカ:そう。まず、曲はけっこうあったんでレコーディングしようって言ってたんですよ。ただ、ちょうどペリカン・ファンクラブと四国を回ってる時に「ちょっと辞めたいかも……」って話になって。思い返してみると俺がけっこう切羽詰まってたし、2人は「もう付いていけねぇ」みたいな感じになって。で、その日は話し合っていったん「辞めない」って結論にはなったんです。でも……そういう空気って一回出てくると本当になっちゃうんですね。何をしてもそのことが頭によぎっちゃうし、俺もステージで120%信用できないと厳しくて。こっちも感情を上手く出し切れない、違和感のあるライヴを何本かやった後「ちょっともう無理じゃね?」って俺から言ったんですね。そこで腹割って話してみたら、お互い「無理だな」っていう結論になった。

一一仕方なくひとりになったと思います? それとも、積極的に今の状況を選んだ?

オオ=スカ:いや、仕方なく、だと思います。やっぱり今もバンドをやりたくてやってるんで。別にソロプロジェクトをやりたいわけじゃない。3人の思想なり何なりが噛み合ってること一一まぁ全部が噛み合わなくても、それぞれが納得したうえでそうなってる、みたいなバンドをやりたいから。

一一だったらメンバーを探すのが先じゃない? なんで今回のリリースに踏み切ったんですかね。

オオ=スカ:あぁ。確かにリリースに関しては一回「止めようか」って話があって、演奏してるのは辞めた二人だし、俺としてもどうなんだろうって思ったんですけど。でも、単純に今までの音源の中で、音も言葉も、初めて自分が納得いくものが作れてたっていう感覚があって。レコーディング中に起きるマジックみたいなのもあったし。確かにバンドとして見たら変な作品かなと思うけど、でも音楽に罪はないと思って。だったらどんな形であれ世に出したかった。じゃないと曲が死んじゃう気がしたんですよ。

 

 

一一録音したのって、2人の脱退話が出る前ですか。

オオ=スカ:話が出る前に3曲録って、出たあとに3曲録った感じですね。でもちゃんと脱退が決まったのは完全に録り終わってから。録り始めた時はそんな話もまったくなかったし。

一一「花焔」の歌詞は、メンバーが去っていくこと、ひとりになることを予見している印象があって。

オオ=スカ:あ、これは自分のことじゃなくて。でも去っていったっていうのは間違いじゃなくて。自分たちと一緒に音楽をやってきた仲間がいて、その子が音楽を辞めたんですよ。それを自分が止められなかった……まぁ俺が止めるのも違うんですけど、それがとても悲しくて。そういう曲ですね。

一一ひとりになるから淋しげな歌がメインになったわけじゃなくて、前作以降からバンド内で曲の方向性が変わっていたと。

オオ=スカ:そうですね。変わったし、変えたかったし、そこは素直に出せたと思います。今までは自分のルーツだけだったんですよ。好きなバンド追いかけて、自分のルーツだけで作ってたと思うけど、もっと暮らしの中とか生活の中の出来事、言っちゃえば些細なことも音にしたいと思うことが増えてきて。それは歌のほうが伝わると思ったし、あとは詞を書きたくなった。叫びたいっていうよりは、ちゃんと歌を歌いたい気持ちが強くなって。あと前の2作って、俺の中では華美なんですよ。けっこう豪華っていうか一一。

一一そう? ものすごくシンプルじゃん。

オオ=スカ:いや(笑)、俺の中では曲をどんどん派手にしていく、足し算の思想だったというか。でも爆音ってある程度限界があるんですよ。それを突き詰めるのが格好悪いとは思わないけど、なんか爆音のこだわりを捨てた……そのこだわりに囚われてた自分に気づいた感じ。「自分がやりたいことは、果たして爆音で歪んだサウンドなのか?」って見つめ直した時に、今はそうではないっていう結論だった。だから、今まで出せてなかった感情を出した一作目っていう感じ。

 

 

一一以前「うるさいことばかりだから爆音で黙らせたい」って言ってましたよね。今はどんな感覚?

オオ=スカ:うーん。黙らせたい気持ちもあるっちゃあるけど……そう言ってたのも、黙らせて、一人ひとりとちゃんと対話したい、っていう気持ちがあるからだったんですね。今はもっと語りかけたい。「俺はこういう人間で、こう思ってる。君はどう思ってるの?」っていうのを聞きたいなって。人と対話するツールになる曲っていうか。

一一そうなると爆音は当然控え目になるし、メロディや言葉をより練っていくのが自然になる。

オオ=スカ:そう。今回の曲って、ほぼ自分の話じゃないんですよ。自分の気持ちを書いたっていうよりは、他人との出来事から生まれたもので。たとえば友達が死んじゃったりして、その時に自分が居ても立ってもいられない感情になって。そんな感情は初めてだった。それを陳腐な言葉にするのは相手にも失礼だし、少なくとも自分の中でとても美しい曲であって欲しいと思ったんで。だから歌詞もすごく考えたし。誰かしらの思い出が一曲ずつ入ってる。俺そのものっていうか、繭に包まれてるものがないっていう音楽にしたかった。じゃなきゃ音楽が絶対っていう選択をした人間じゃないとも思ったし。

一一オオ=スカくんはかつて芝居に熱中していた時期もありますよね。なぜ音楽に今、そこまで絶対と言いきれるんでしょう。

オオ=スカ:まぁ、単純に救われたっていうのもあるし、音楽で出すのが一番素直な形だからですね。芝居を辞めた理由もそこに帰結するんですけど、芝居って他の人を描いて、そこになりきることが本懐なので。自分はそうではない。始まりは自分でありたい、っていうのがすごく強くあるんで。だとしたら僕は音楽かなって。物語を描くのも違うし、詞だけでも違う。音と歌が存在してて、そのうえで自分の主張にしたいから。

一一そのわりに「BOY」を立ち上げてインタビューを始めたり、なんか、いろいろ広げすぎてるんじゃないかって思います。

オオ=スカ:ああ(笑)。「BOY」は……まずメンバーが全員抜けた時に、自分っていう人間が一回全否定された気持ちになったんですよ。

 

 

一一あ、それはなんとなくわかる。

オオ=スカ:でも半年前の自分を見たら「俺が完全に間違ってた」とも思うんですね。人として。このままじゃ俺は良くないなと思ったし、音楽以前に自分を成長させないとなんの説得力もねぇなって。だから、「BOY」は俺が面白いと思う人たちを広めていこうっていう思いも当然ありますけど、それよりは自分が成長したいって思いが強いんですよ。いろんなものを知って、悲しんだり笑ったりしないとダメだなって。

一一それって記事化する必要はあるの?

オオ=スカ:形にして出したい。その記事に対して何かアクションが起こるなら、それも吸収して成長したいし。それは二人で飲み会で熱い話をしてるだけじゃ成立しないじゃないですか。二人の話を不特定多数の人に見てもらって、それに対する反応をもらって、いろんな意見を知ったうえでYESかNOかを選択したいというか。盲目でありたくない。今まであまりにも他者との関わりを絶ちすぎてたから。直感的に人を否定することが多すぎて。もちろん嫌なことは嫌だけど、ちゃんと知ったうえで嫌って言いたいし。

一一うーん……それより早くバンド立て直せよって私は思いますけどね。

オオ=スカ:ははははは! まぁそうなんですけどね。今はサポート・メンバーなんで完全にバンドとは言えなくて。周りを見れば焦りは相変わらずあるんですけど、ただ、誰でもいいわけじゃない。音楽だけで繋がれればいいってわけじゃなくて、それ以外のところでも、思いとか生活をちゃんとメンバーと共有したいし。最終的にバンドでやっていく思いは変わらないから。だから変な焦りは今はないかなぁ。「すぐにでも誰か見つけてやらなきゃ!」っていう感じではなくて。気持ち的には、人探しの旅をしてる途中って感じですね。

一一この作品を出すこと自体が焦りじゃないの? Teenager Kick Assをバンドと考えるなら、ちゃんとメンバー固めて再録すべきだろうし。

オオ=スカ:あぁ。これに関しては、せっかく録った曲が立ち消えちゃうのが嫌だった。で、未来的な話をすると、いずれアルバムで再録したいとは思ってる。でもEPはEPの録音があって、そのうえで次のアルバムを作る時に、新メンバーで整ったものを録音したくて。だから、これはこれで必要だった。

 

 

一一そっか。まぁ正直絶賛はできないです。ゴリゴリにいきり立ってる若手だと思ってたのが、いきなり曲調変わってて、歌そのものに深みや説得力が感じられるわけじゃない。で、ひとりになった状況で今EPが出るって言われてもなぁ、みたいな(苦笑)。

オオ=スカ:あー、でも確かに。一般的に言ったら、求められてるものではないんだろう、とは思います。今は若い世代でこういうロックが盛り上がってるっていうオルタナ界隈の話もあって。でもそれは「知らん!」って感じですね。別にあなたたちのために作ってるわけじゃない。ずっと自分のために作ってるし、他者に向けて出すのも自分のためだし。

一一メンバー脱退も含めたバンドの現状、その時その時の自分の気持ちも含めて、ちゃんと作品に残しておきたいと。

オオ=スカ:そうっすね。自分の成長の物語っていうか。で、今のサポート・メンバーと、今度またレコーディングするんですね。そこでは新曲もかなり面白いものが作れてるし、自分の中のインプットがどんどん増えてくのを実感してるんで。だから、これはこれで否定されてもいい。それでも出したかった。次の作品を出すときに、この『ウタトイノチ』もちゃんと在って欲しかったんです。

一一今って、一曲だけMV作ってネットに上げたって話題を作れるような時代ですよね。一枚の作品にこだわる理由って実はないかもしれなくて。

オオ=スカ:たぶん……俺が、一個の作品を作ることに執着があるんです。何かを完成させるっていうことに途轍もないこだわりがある。それが不完全なものであっても、現状の俺の作品であり記録である、っていうことを届けたいから。話は大きくなるけど、ゴッホとかも当時は評価されないし褒められもしないけど、彼だってそういう声が欲しくて描いてたわけじゃないと思う。俺はそんな大層なもんじゃないけど、感覚は近いんですね。なんか、あまりにも他人がいない。他人にどう見られて評価されるっていう感覚。もちろんMVがたくさんの人に見られるのが重要だっていう話もわかるけど。でも根本でなんか「それって音楽? 作品に関係あるか?」って思う。で、自問自答して「ねぇな、やっぱり」って思う。俺は俺をまっとうしたいし、そのうえで、自分が作ったものは世に出したいし。言っちゃえば全部自己満ですよね。それでいい。

一一オオ=スカくんって、今時珍しいくらいのエゴイストだよね(笑)。

オオ=スカ:ははははは! そうそう、その自覚はめちゃくちゃある。嘘臭いじゃないですか。「誰かのために音楽を作っています」とか言うの。そんなんじゃなくて、居ても立ってもいられない自分を納得させたいだけじゃねぇのかって思う。俺はだって「俺のエゴをまず見ろ!」って思うし。

 

 

一一はははははは。出た。

オオ=スカ:もう結論(笑)。それに対して人がどう思うのかなんて知らん。ただ、前までは否定されると「なんだよ!」って思ってたけど、今は「じゃあいいよ。逆にお前が面白いと思うもん教えてくれよ」って言える。で、好きでも嫌いでもいいから自分でもそれを一回見てみよう、とは思ってる。それくらい人の意見は聞けるようになったとは思う。

一一君とやっていくメンバーは大変だなと思う。でも同じくらい自我の強いドラムとベースが今後入れば、Teenagere Kick Assは凄まじく面白いバンドになりそうですね。

オオ=スカ:そう。それ! まぁ時間かかりますけどね。でも自分を信頼してるっていうか、自分の音楽の未来にはある程度自信持ってるから、そこは不安じゃないっすね。

 

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