Vol.10

「やっぱりコロナになって改めて感じたのが「俺達のやってる事ってライブハウスじゃないんじゃないか。」って気持ちと「ライブハウスって何なんだろう」って言う根本的な部分に立ち帰っちゃって。」
小牟田玲央奈(リンキィディンク ライブハウス部門統括)

「ライブハウス」ってなんだろう。

昨今あまり未曾有の感染爆発によって事あるごとに槍玉にあげられる「ライブハウス」というもの。バンドをやっている我々のような人間とは切っても切れないもの。そして昨今のコロナパンデミックの流れの一端として、望んだ結果では無くとも「ライブハウス」というものが今大衆の注目を良くも悪くも引いている。しかし、我々バンドマンとあまりに密接なそれを果たして本当にちゃんと我々は理解して共に歩めているのだろうか。「ライブハウスが俺達の帰る場所」とのたうち回る奴は多いが、その「帰る場所」の中で暮らしている、我々以外の人達と我々は本当の意味で向き合えているのだろうか。

東京に在る八店舗のライブハウスを運営するz株式会社リンキィディンクという場所で、二十数年闘い、守り、紡いできた男が居る。名前を小牟田玲央奈。リンキーディンク系列の都内八店舗のライブハウス統括という立場の彼は一体この今、そして今迄この場所で何を見て何と闘い何を守り何を『壊す』のか。

「ライブハウス」と呼ばれるこの場所で闘い続けてきた男から見えた、これからのライブハウス、そしてバンドの新しい景色。それのほんの一部分がこのインタビューである。

text & photo & interviewer by 大須賀(Teenager Kick Ass & BOY)

「逆にお前なんでそんなに店長って肩書き欲しいの?って事を会社の人に言われたりして。でも、それは肩書きが欲しかった。俺はそういうのを大切にしたかったから、店をやる上で。」

大須賀: 玲央奈さんが音楽業界に関わった最初って何だったんですか?

玲央奈:関わったのはバンドやり始めてからかな。二十代の時に。

大須賀:その後ライブハウスに行ったってことすか?

玲央奈:行ったっていうか…説明すると凄い変な感じになるんだけど。元々はバンドやりながらWarpのスタジオ番(吉祥寺Warpには隣接した同じ系列店舗のスタジオが存在する。)で働き出して。

大須賀:そん時はじゃあライブハウス勤務じゃなかったって事ですよね。

玲央奈:もちろんもちろん。基本的にはスタジオ部門で働いてたから。Warpで働き始めたのはその後。

大須賀:それが変わったきっかけって何だったんすか?

玲央奈:それは簡単に言うと…当時Warpが結構こう、なんつーんだろうな。箱として良くない空気になったタイミングがあって。まぁその当時の店長が悪い言い方すると”良くなかった”んだよね。そのタイミングで働いてた子から「ブッキングやって欲しい」って話をされて。確かに空気が良くなかったから俺がやった方が良いな、ってのはもちろんあって。でも当時の店長は俺がブッキングやったら乗っ取られるじゃないけど、そうなるみたいな事も何となく空気感的にわかってたから。君の事もちゃんと立てるから、って話で俺にブッキングやらせてくれって始めた感じかな。

大須賀:まじすか(笑)じゃあ、元々イベント制作とかに興味があった感じだったんですか?そういう声の掛けられ方したって事は。

玲央奈:音楽、てかバンド全体が好きだったから。組み合わせとかするの凄い好きで。まぁ得意だった。今でも得意だけど(笑)

大須賀:そうすね。(笑)Warpの店長になったのはライブハウス勤めてからどれぐらいしてから?

玲央奈:ライブハウス勤めてからは二年ぐらいじゃないかな。

大須賀:え、そんな早かったんですか。

玲央奈:そうね、結構早かったかも。

大須賀:他の今のリンキィのライブハウス(吉祥寺Warpを始めとする、下北沢ERA、西永福JAM、大塚Meets、新宿Nine Spices、八王子MatchVox、八王子RIPS、西荻窪FLATの八店舗のライブハウスや各種スタジオも併せて経営する株式会社。玲央奈は八店舗のライブハウス部門の統括という職に就いている。以下、リンキィ。)の店長の人でもそんなに早い人いましたっけ。

玲央奈:どうだろうね。まぁ、店長って制度が無かったのよ、基本的に。

大須賀:リンキィにすか?

玲央奈:リンキィ自体に。逆にお前なんでそんなに店長って肩書き欲しいの?って事を会社の人に言われたりして。でも、それは肩書きが欲しかった。俺はそういうのを大切にしたかったから、店をやる上で。

大須賀:誰がトップかどうかって事は大事っすよね。

玲央奈:そうそう。二年ちょいぐらいで店長にはなった気がする。前任の店長が辞めたっていうか離れたってのもあるけど。前の店長が想像した通り俺が乗っ取ったみたいな感じだよ。それはもう自信持って言える。

大須賀:俺前の店長わかったかもしんないっす。(笑)レーベルやり始めたのはいつぐらいなんすか?

玲央奈:レーベルいつだっけなー。思い出せないけど…。

大須賀:最初に出したのはリチウム(新世界リチウム。玲央奈のレーベル”REVOLUTION TEMPLE RECORDS”通称”レボテン”に所属するバンド。二千十五年、解散。)
なんすか?

新世界リチウム「ヒューマニズム

玲央奈:最初に出したのはそう!二千何年かなあれ。十四年前ぐらいじゃないかな。

大須賀:そん時はもう店長って感じですか?

玲央奈:いや、狭間ぐらい。ブッキングマネージャーで。Warp自体にブッキングが殆ど俺しか居なかったからほぼ俺がブッキング制作自体俺一人で回してた。そん時に新世界リチウムがWarpに出て。レーベルとかあんまり興味なかったけどライブ観て「このバンド出したいな」って思って始めたって感じ。

大須賀:あれって玲央奈さんの完全な個人レーベルなんすか?

玲央奈:いや、最初はリンキィの中で作った。リンキィの金使ってやらしてもらったって感じ。

大須賀:そうなんすね。今でこそ下北沢Daisy Barとかの”2DK RECORDS”とかライブハウスが経営するレーベルみたいなのが多少あるけど、そういうのって当時もあったんですか?

玲央奈:ERA(下北沢ERA)とかもやってたしね。avengers in sci-fiとか出してて。当時の新宿JAMとかは鶴とか出してて。意外と色々やってたけど隅々まで関わる、って事は無かった。CDをリリースするってことだけ。CD出してツアー行って、っていうマネージメントみたいな事まではしてない。新世界リチウムに関しては俺はやってたけどね。

avengers in sci-fi「Yang 2」

大須賀:ライブもツアーもマネージメントとしては関わってたって感じで。

玲央奈:そうね、新世界リチウムだけに関しては。

大須賀:レボテンとしてはその後に裸体とか出したって感じですか?

玲央奈:そうね。流れ的にはそうだね。

大須賀:今って他に誰が居るんでしたっけ。SEMENTOSとアカリちゃん(ハネダアカリ)と…。

SEMENTOS「こんな夜は」
ハネダアカリ「うまれたて」

玲央奈:あと上々brothersと、後一応リリースはしてないけどalt of the society。(笑)

上々Brothers「ダンスワールド」
alt of the society「六月ノ雨二討タレテ」

大須賀:ああ、そうだ。(笑)

玲央奈:名前だけですけど。(笑)

大須賀: 玲央奈さんって今立場的にはリンキィのライブハウス部門の統括って感じなんすか?

玲央奈:統括。ライブハウス統括。

大須賀:それってやっぱり今までやってたモノとかなり違うもの、な訳じゃないですか。現場の店長って立場でWarpなり一つのライブハウスを守っていくって立場、統括って立場で八つのライブハウスを守ってゆく支えてゆく立場、って。それって自らやりたいってなったのか、それとも会社の人なり何なりにやってよ、って言われたのかそれが結構気になってて。

玲央奈:あーそもそも、その構想ってのが俺の中では結構前からあって。

大須賀: え、玲央奈さんの時に初めて出来たんですか?統括って。

玲央奈:統括自体はなくて。それぞれ各店の店長、ブッカーに任せるって形だったんだけど。言ってもFLAT(西荻窪FLAT。)入れたら八店舗あるから。それをちゃんと足並み揃えるのって、俺がWarpの店長やりながらでも難しいっていうか。まぁ、実はWarpの店長だった時から纏めてたりしたんだけど。なんか途中から段々、会社と現場の温度感の違いに気付いて。間にしっかり入ってあげないと現場が困惑しちゃうなーってのはあってさ。店長やりながらやってたけど、ちょっと店長職やりながらだとやる事が多過ぎて。

大須賀:八店舗分ですもんね…。

玲央奈:そうそう。だから力のあるブッカーが育ったら店長譲ってそのポジションに行きたいって気持ちはずっとあって。けどみんなやっと一人前になったなー、ってタイミングで辞めちゃったり、バンドでガッツリやっていきたい!ってなっちゃったりする人が多くて。今はきょんきょん(現吉祥寺Warp店長。)が育ってやっと正式に譲れた、って感じかな。

大須賀:って事は構想自体は統括って職に就く前からあったんすね。

玲央奈:そうね。段々上の人も歳を取ってくし、俺も歳を取ってくし。俺二十年ぐらいこの会社に居るんだけど、当然入った時より二十年歳を取るわけじゃん?さらにまたこっから先二十年歳を取った時に多店舗経営してるやり方の礎を作っておかないと、会社も現場も混乱しちゃうってのがあって。一番良いやり方を現場と会社が出来ないといけない。でも、そこには俺と現場も二十年の差があるから。もっと言うと、会社の上層部のおじいちゃん達は俺より二十年の差があるわけじゃんか。って事は現場と四十年の”差”がある訳よ。そうなると中々経営面では理解し合えないのよ。

大須賀:四十年前のライブハウスを見てた、作ってた人達の感覚と、今現場でやってるライブハウスの人達の感覚って全然違いますもんね。

玲央奈:絶対違うから。四十年前にこんなに地下アイドルがわんさか出てくるなんて誰も想像してなかったし。

「そう言うバンドの連中がWarpを「ホーム」って言ってくれてる、って考えた時にやっぱり「関係ないな」って思ったのよ。それってやっぱりジャンルなんて関係なくてその人達がどう想うか、その人達と俺達がどう言う関係を築いていけるかってだけであって。」

大須賀:話変わるんですけど、今までリンキィって自分出てても思うっすけど閉ざしてるなって思う部分もあって。リンキィはリンキィの中でバンドもお客さんもそこで長く培ってきたものがあって。勿論素晴らしい物も歴史もあるけど、”リンキィ系”って言葉がやっぱりあったりして。

玲央奈:まぁね。勝手に作られたりしてたよね。

大須賀:でも、玲央奈さんが統括になってからそこが変わったのかなって。例えばCRAFTROCK(日本橋にあるCRAFTROCK BREWPUB&LIVEの主催するイベント。近年では制作をリンキィがしている。)とかバンド単位で言ったらLOSTAGEの五味さんとかと玲央奈さんの絡み方とかもそうなんですけど。でもそれってリンキィの仕事、って言ったらちょっと違うじゃないですか。それでもやろうと思ったのは意図的だったんですか?

玲央奈:そうね。まぁ、別に俺のことなんか見てないんじゃないんかって言うのもそもそもあって。でも、もし見てくれてる人が居るなら「あの人やってる事、色々おかしいな」って思われる事を続けていくとガタガタすると思うんだよね、色んな物が。そっちの方が良いって言うか、決めないでグチャグチャしてた方が面白いなって。そういう”歪み”みたいなものを色んな所で叩いてる感じ(笑)。今まで作った物を割ってってるみたいな。砕けて面白い感じに行くんじゃないかな、って事をずっとやってるかな。

大須賀:例えばリンキィに居てWarpの店長って立場の上で、Warpがちょっと閉ざしてるかもなって感じたりもあったんですか?

玲央奈:いや、Warpに関しては無いよ。逆に気付かせてくれたって感じ。自分があんまりジャンルとか関係ない人間だから、例えば俺が店長だった時とかにハードコアの連中がWarpでライブやって「俺らのホームに来てくれてありがとう!」って言ってくれたりして。新世界リチウムとか歌モノの奴等もそう言ってくれたり、Wiennersとかが言ってくれたり、hip-hopの奴等、レゲエの奴等、例えば犬式とかが言ってくれたり。そう言うバンドの連中がWarpを「ホーム」って言ってくれてる、って考えた時にやっぱり「関係ないな」って思ったのよ。それってやっぱりジャンルなんて関係なくてその人達がどう想うか、その人達と俺達がどう言う関係を築いていけるかってだけであって。俺はそう言うつもりでWarpはやって行きたいから同じような事じゃ無いけどリンキーディンクがどう見られてるか、とかは凄い意識してるしそん中でもどれだけ多様な人達に使ってもらえるか、が重要だよなーって気はしてる。

Winners「ブライトライト」
犬式 INUSHIKI「山唄」

大須賀:じゃあさっきの”歪み”を作る事で使ってもらえる人増やせたらいいな、みたいなのがあるって事なんすかね?

玲央奈:だし、固めたく無いっていうか。リンキィだからこうですよね、ってそれ勝手じゃん。

大須賀:偏見、じゃ無いけど。

玲央奈:そう。相手側の何かを壊して、って感じよ。ある人から見ればライブハウス何店舗も持ってる、スタジオ何十店舗も持ってるリンキィディンクさんですよね、って見え方もするし。でも別にそんな大したもんじゃ無いし、もっと砕けて話したい。その逆もある。めちゃくちゃデカい箱に対して「俺達は小箱でずっとやってるけど何か違うんすか?デカいバンド呼べてるから偉いんすか?」って。そういう垣根も壊したい。例えば、俺的には大塚MeetsにSEKAI NO OWARIが出ても良いのよ。※大塚Meetsの最大収容キャパシティはオールスタンディングで百人。

大須賀:そう言うことっすよね。

玲央奈:俺の感覚ではね。何がダメなのか分からないっていうか、それで良くない?っていうか。

大須賀:統括になってからやっぱりアグレッシブですよね。俺も玲央奈さんを長く知ってる訳じゃないですけど。

玲央奈:それはやっぱり溜まってたから。やりたかったから。Warpだけじゃない事をやりたかったから。それこそリンキーのクラフトビール作ったりさ。それが目に付くんじゃないかな、大須賀とかに。

大須賀:目を引くんすよ。(笑)

「やっぱり千人二千人を相手にする感じと俺らの感じって違うのよ。あっちはお客さんを回さなきゃいけない、それもわかるんだけどそこと俺らはやっぱり違うよね、って。」

大須賀:最近別にコロナ関係なく思うのは、今ってやっぱりライブハウスが若干下火になってる時代だなって。コロナ禍になってから特に、って言うか。変なレッテル貼られちゃった部分もあるし。こんな状況ってやっぱり玲央奈さんからしても二十年の中では無かったんですか?

玲央奈:ないっしょ。こんなん無いよ(笑)

大須賀:震災(東日本大震災)の時とかと比べてもやっぱり違いますか?

玲央奈:あの時は天災だからさ、全てに於いてじゃん。全てに於いて日本全国が食らってるっていうか。今回はやっぱりそれに比べると違うんじゃ無いかな。

大須賀:人災の部分も多いっすもんね、コロナに関して言うと。

玲央奈:その部分もあるし、それによって影響を受ける人と受けない人も出て来てると思うし。それこそ俺達とかは”密”を売り物にして来てるから。やっぱり違うなって思う。

大須賀:凄い冷たい言い方をするとライブハウスもビジネスじゃないですか。当然来てくれるお客さんにお金を貰って生計を立てて働いてる人を養ってる。その中でこの状況に合わせてライブハウス、バンドもそうですけど新しいビジネスモデルを見つけないとな、って思うんすよ。例えばライブ配信とか、酒類提供出来ないならちょっと工夫したソフトドリンクを出そうよ、とか。そう言うの色々やってもう一年ぐらいになりますけど、玲央奈さんの思うこれからのライブハウスの新しいビジネスモデルってどう言う感じなのかなーと。

玲央奈:うーん。これはナタリーのインタビューでも言ったんだけど、やっぱりコロナになって改めて感じたのが「俺達のやってる事ってライブハウスじゃないんじゃないか?」って気持ちと、「ライブハウスって何なんだろう」って言う根本的な部分に立ち帰っちゃって。

大須賀:というと?

玲央奈:昔っから思ってたんだけどBLITZ(赤坂マイナビBLITZ)とかEAST(渋谷O-EAST)とか大きい所もライブハウスって呼ばれてて。そう言う所にしか行った事が無いって人達が山程居てさ。メジャーバンドしか見てない、三百人キャパぐらいのライブハウスには行った事ない人達の感じとかを見てると、俺達のやってる事って同じ括りには居るべきじゃ無いのか、逆に向こう側の大きいライブハウスとかをライブハウスって呼ばないようにするとか。もっと別の呼び方をするって言うか。別にわざわざそこで揉めたくないし何か考えたくも無いから、じゃあ俺達は新しく”ライブ&バー”として生きてった方が良いんじゃないの?ってのは凄い思ってて。海外と一緒なんだけど基本的には酒呑む場所、飲食店として。

大須賀:あー。

玲央奈:東京のライブハウスは八割九割ぐらいが飲食店登録、取り扱いが多いんだけど、例えば大阪とかは飲食店登録取り扱いじゃなかったりとかするのね。そうなってきて俺らって飲食店って言われてんだから、まず飲食店としてまずそこは成立する、でライブホールもやってる、ってそう言う感覚。そうなってゆくのが良いのかなって思って。たまーに「なんでファーストドリンクに五百円、六百円払って氷結とか水しか呑めねーんだよ」って話とか出て来るじゃん。でもそんな事やってるのってデカ箱しか無いのよ。俺達ぐらいの小箱ってグラスに氷入れてちゃんとそこそこのリキュール選んで買って美味しいお酒を出すって心構えで居る訳じゃん。それとハイ氷結、ハイ水、ってやってんの同じライブハウスかって言われるとやっぱりめちゃくちゃ難しいじゃん。

大須賀:俺もライブハウスで働いてたからわかるっすけど、当たり前ですけどデカ箱とかって千人二千人のお客さんに対してドリンクカウンター多くても五人とかで回さなきゃいけない。俺らのやってる所ってやり方が違うって言うか。例えばデカ箱ってドリンクカウンターとライブスペースが離れてるじゃないですか。でも俺らの出てるぐらいの小箱って同じ場所にあってライブを見てお酒を飲むってのがもう少し近い感じがするんすよ。お客さんとの距離感もそうだし。お客さんからの要望とかもやれる限りなら応えられるし。

玲央奈:まぁでも大きい箱はさ、回転率がいるから。千人二千人の一人一人に泡盛水割り!とか毎回毎回出してたら間に合わないわけじゃん。だから簡単なボトルとかになるのは仕方ないし、わかるのよ。だったらお客さんにも感覚を変えて欲しくて。デカいライブハウスのドリンクカウンターの感じと、俺らぐらいの小さなライブハウスのドリンクカウンターの感じと。お客さん一人一人に言いたいぐらいなのよ。ライブハウスの酒高い!って人に対して俺達これぐらいこだわって原価の高いお酒も出してますよ色々やってますよ、ってことを。

大須賀: ライブハウスとしての部分は勿論そうだけど、俺達飲食店としての良さをもっと広げてそれを知ってもらいたいってのがある?

玲央奈:まぁライブ&バーみたいな方の良さを突き詰めてった方が今の俺らみたいな小箱には合ってるんじゃ無いかなって気はしてる。その方がやりやすいよね。

大須賀:よく見えるってのもあるんですかね、お客さん一人一人が。

玲央奈:だし、そういう風に見てもらいたいってのもある。お客さんに対して。ライブ&バーとしてもっと。金を払う価値がある、って思って貰えれば良いわけじゃん、俺らが努力してる事に。ケチつけてる訳じゃ勿論ないんだけど、やっぱり千人二千人を相手にする感じと俺らの感じって違うのよ。あっちはお客さんを回さなきゃいけない、それもわかるんだけどそこと俺らはやっぱり違うよね、って。

大須賀:それこそファーストフード店と地域の小さな定食屋じゃ全然同じ飲食店って括りでも全然違うすよね。入れられるお客さんの数も求められる回転率も。そこを同じ括りで語られると違って見えちゃうよな、って言う。

玲央奈:全然違う。一括りに定食屋!って言ってもめちゃくちゃ難しいじゃん。チェーンのファーストフード店と爺ちゃん婆ちゃんのやってる定食屋ってさ。

大須賀:そこのイメージを払拭したいって事すか?

玲央奈:払拭したいって言うか、どうしたら良いんだろうなって考えてるよ、ずっと。やっぱり分けたい。個人的には。

大須賀:ざっくり言っちゃうとデカい箱と、Warpぐらいの小箱と。

玲央奈:でも多分みんな譲らねーじゃん。俺らもライブハウスだよ!俺らがライブハウスだよ!って(笑)。うちの店長達がどう思うかまではわからないし、まだそこまで行き着いてないけど「ライブハウス&バー&Warp」みたいな(笑)。意識の定義を変えたい。分けていきたい。お客さんの思うライブハウスって「ライブハウス&ホール」のこと言ってるよね、って。だからドリンクに関して文句とか出て来るけど俺らみたいな小箱は美味しいドリンクとか作る為に努力してるし。俺らも当然頑張るし、逆にあっち、デカいライブハウスも努力するかもしれないじゃん?それってどっちにとっても良いわけじゃん。頑張り合いっていうかさ。

大須賀:俺達はお客さんの為に細かい所かもしれないけどそういう部分も頑張ってるし、頑張っていきたいってことを知って貰いたいってことですよね。

玲央奈:そうね。その為に分かり易く名前を変えるのも良いかなって。

大須賀:自分のお客さんとかでも何見に来たんすか?って聞くと「暇だから酒飲みに寄ったんだよ」みたいに言われることが多くて。そういう感覚って大事だなって。映画とか見に行くみたいな感覚でライブハウスに来て欲しいっすよね。

玲央奈:本当はそうしたい。でも、ライブハウス側がそういう風にしてないって言うのもある。もっとオープンにしていかないといかんなぁ、って。

「ずっと思ってんのは”取り置きチケット”のムーブを起こしたいのよ。もっと流行らせたい。」

玲央奈:凄い昔話になっちゃうし自分でも不思議な話なんだけど、二十代前半のバンドやってた時ってバンドのホームページとかも無くて。ビラは配ってたけどそれだけで俺アンチ(新宿アンチノック)とかなんで埋められたのかなって。そんなに友達も居ないし、でも百人二百人なんで埋められたんだろうって今でも思う。それってフラッと遊びに来た人達とか結構居たと思うんだよね。その日のバンドの組み合わせも込みで。

大須賀:(笑)。俺凄い思うのが昔って「遊び行こうよ、映画とか行こうよ」みたいな感覚でもっとライブハウス来てたと思うんですよね。でも、今って気負っちゃうって思うんですよね。ライブハウスってまだやっぱり怖いし。まずライブハウスって何?って。分からないもんって怖いし。

玲央奈:とは思うよ。今は俺もバンドやってないしWarpも離れちゃったけど、ずっと思ってんのは”取り置きチケット”のムーブを起こしたいのよ。もっと流行らせたい。

大須賀:それって何でですか。(笑)ラフな感じ?

玲央奈:ラフな感じっていうか、そもそもバンドってノルマがあって物販で次のライブのチケットを売るって言うのが当たり前だったのよ。超普通だったのよ。それをまたみんなで頑張って欲しい。(笑)その代わり、手売りチケットはバックめっちゃ高いみたいな。

大須賀:バンドには多く返ってくるってことすよね。

玲央奈:二千円のチケットを手売りで二十枚貰いました、でも一枚につき六割は返す、みたいな(笑)。それでも良いと思うんだよね。その方が好き(笑)。

大須賀:その方が売ってる人、来てくれてる人の顔とかもわかりますもんね。一人一人。

玲央奈:そうそう。今って「次のライブ行きたいんですけど」ってなったら「ホームページとかTwitterとかで検索して下さい」ってなるじゃん。めちゃくちゃカッコいいなって思って次のライブこれか、あ、好きなバンド出るな、じゃあカッコよかったし君達からチケット買うよ、ってその場でなった方が良くない?

大須賀:ちょっと感じは違うけど、LOSTAGEの五味さんが自分らで誰に売ってるか知りたい、だからやるっていうののライブハウス版みたいな。

LOSTAGE / SEEDTIME & HARVEST

玲央奈:結構近い。てか、そもそもそうだったのよ。若い子バンドやってる子とかでさ、物販無い子とかいるじゃん。本当はあるのよ。手売りチケットが(笑)。次のライブのさ。

大須賀:そうか。(笑)自分らの商品として音楽をって考えたら、よりそうっすよね。

玲央奈:そうなのよ。だから何でやんないのか、すげー不思議。

大須賀:それでしか良くなっていかないっすもんね、バンドって。ライブやってお客さんに見てもらって、お客さん増やして、その連鎖でどんどんデカいもんやってく。

玲央奈:そうそう!その通りだと思うよ。客が減ってるって言うけどバンドの努力も足りてねぇ、って思うよ。別にライブハウスも悪いかもしれんし、色んな事が相乗効果で悪くなってる可能性もあるよ。ノルマってものに色んな人が苦言を呈して、昔と違ってノルマがない箱が増えたし。じゃあノルマ無いならどうやってお客さん呼ぶの?ってなった時、手売りチケットって文化はかなり減ったなって思うのよ。客が増えないどうしたら…って言うけど、じゃあ手売りチケット貰ってバイトの友達とかに「ライブ来てください」って言って渡せば良いじゃんって所もあるし。それこそ二十年前のバンドマンとか高円寺の駅前でチケット手売りしてたりしてたよ。(笑)そこまでしろとは言わないけど。

大須賀:ライブ見て良かった、物販買いたいです、次のライブいつですか?って聞かれてじゃあTwitter見てください予約してください、って事じゃないっすもんね。当たり前だけど。

玲央奈:二度手間だよ(笑)。来てくださいよ、で良いわけじゃん。手売りならその場で。

大須賀:で、実際買った人の顔もわかるしチケットの取り分も多いならバンドに返ってくるものも多いし、ライブハウスにも返せるし。健全っすね。

玲央奈:超健全。なんでみんなやらないんだろうって思ってる。(笑)

「パンクとかハードコアとか見たことない人達が「何この煩い音楽」っていう奴とかもっともっとやってかないとな、って思うし。もっともっとグチャグチャして行きたいなって。」

大須賀: 玲央奈さんって今統括もやってレーベルもやって、昔はWarpの店長もやってって道のりがあってその中で現場一旦離れても定期的にリンキィでイベントやったり、その中でバンドとの付き合い方として心掛けてる事ってあるんですか?

玲央奈:うーん、これはレーベルのバンドに対してって話になるんだけど。「申し訳ないけどお前らの事に関して、俺はお前らの事が凄い好きだから俺の時間を使ってる」って話をしてて。お前らだけの話じゃないし、お前らのやりたく無い事は俺もやりたく無いしお前らのやりたい事に対して俺も時間を使うけど、お前らが本気で何かをやりたいとか考えてる事がないと、ただ第三者の寿命を削ってるって事を忘れちゃいけないよ、って。

大須賀:レボテンの話だとLOSTAGEの五味さんがSEMENTOS(レボテン所属のオルタナティブロックバンド。Vo&gtの藤村洋平は玲央奈が統括する新宿Nine Spicesの店長)の藤村さんに言ってたらしいんすけど「CD千枚売れへんバンドをレーベルから出す意味ないで」って。難しい部分ではあるけど、やっぱり忘れてる事だなってそん時思ったと言うか。千枚ってやっぱり俺らぐらいだと超えるか越えられないかがめちゃくちゃ現実的な壁だけどレーベルから出してるならレーベルの人が関わったり、それこそメンバーなりがいる時点でメンバーは少なくとも関わってるわけで。その責任をフロントマンが、バンド自体が思ってないと次に繋がっていかないよなって思ったって言うか。

玲央奈:うーん、まぁ千枚って数字がどうなのかは分からないけど「今のご時世俺らぐらいの規模感でCD千枚なんて売れない」って俺らの概念からすると「千枚って売れる」と思うのよ。てか、そう言う気概でやらないとそう言うものになっちゃうよ、お前の魂込めたアルバムが千枚売れないものとして存在するって事だよ、っていうか。

大須賀:それはそうか…。だって、世界一カッケーって思ってるんすもんね。そのアルバムを。

玲央奈:そうそう。世界一かっこよくて世界一かっこいい音源を作ったのに頭からそれで動くんか?っていう話なのよ。そんないきなり諦めから入られると、やった意味ねぇよ、みたいな。

大須賀:それを踏まえての「俺の時間も使ってんねんぞ」って事すよね。

玲央奈:だって売る為に頑張ってきたし格好いい音楽を作ってそれをどうにかする為に裏方として存在してる訳なのに本人達がそういう感じじゃいかんよね、ってなるやん。

大須賀:さっきの話に戻りますけどそれってライブハウスで玲央奈さんが付き合ってるバンドとかにも思ってるって事すか?

玲央奈:ライブハウスのバンドってなると俺めちゃくちゃ多くなっちゃうから。(笑)自分のレーベルのバンドにはって感じかな。それだけ時間使ってるし。ライブハウス出てる奴らは会った時に相談されたら話すし、例えば今日の大須賀のこれとかもそうだけど言われないと動かないし。ライブ見に来て欲しい、とか言われないと行かないし。言われたらなるべく行くようにしてるけど、そういうキッカケ作りをバンドが自分からして欲しい、ってのは思う。俺が見に行ったからどうなる訳でもないけど。

大須賀: 玲央奈さん個人の話で良いんですけど、ライブ見て良いなって思った時ってどう言うものを見た時に良いなって思うのんすか?

玲央奈:うーん、やっぱり…気合いを感じた時じゃない?若いバンドとかで「売れたい!」「やっていきたい!」って子が居るとするじゃん。その子らが月に一回ライブするとしたら一年間で十二回しか無くて。五年間でも六十回しかないわけじゃんか?でも一年間で三百六十本ライブやってる人達とかも居て。その時にどれだけ自分らが音楽に時間を費やすのか考えた方が良いっていうか。俺もバンドで飯を食いたいって思ってた人間で今裏方として携わってるからよく思うんだけど、どうするかなんだよ。アルバイトを週五でやってて、一日九時間やって帰ってきたら疲れてバタンキューしてます、バンドでは週に二回ぐらい練習してます、ライブが月に二回から三回ぐらいあります、ってそれを全部時間に表してみると驚く程バイトの時間しかないわけよ人生に於いて。それを二十代前半でずっーとやってるわけよ。すると残るものって、無いのよ。無いって言うか結果仕事メインになる。でもそれってしょうがなくて。埋め尽くされてる時間が仕事なんだから。

大須賀:そうっすね、それは。

玲央奈:売れてないバンドをやってた俺ですらスタジオ番やりながら一日八時間労働した後に一日三時間ぐらい個人練習入ってたのよ週四で。でバンド練習が週二回ぐらいあって。これでやっと費やしてる時間がギリギリ半々ぐらいだったのね。仕事とバンドの為に使ってる時間が。だからかろうじて音楽でどうにかなりたいって気持ちが強かったのよ俺は。

大須賀:無くなってくよ、って事ですかね。気持ちが。

玲央奈:無くなっていくって言うか食い潰されてくよ、って。時間が。そこは気を付けた方が良いっていうか。

大須賀: ”気合い”の話なんすけど、玲央奈さんの言ってる”気合い”ってすげー深く感じるっていうか。例えば玲央奈さんが良いって言ってるバンドで俺が仲良いバンドだったらレボテンのバンドだったらSEMENTOS、レーベルじゃなかったりするバンドだったら、さよならポエジーとか。でも彼等ってわかりやすい”気合い”とはちょっと違うところに居るなって思うんすよね。だから、深く感じるというか。

玲央奈:なんだろうな、SEMENTOSとかポエジーとかって音楽の事考えてる時間が凄く長い気がする。自分達のやりたい音楽に対しての。

さよならポエジー「pupa」

大須賀:それが伝わってきたから感動した?

玲央奈:うん。伝わってくる。ポエジーに関してはそもそもセンスが良くて。俺らぐらいの年代にも届く歌詞感っていうか。青さが無いな。(笑)青さがほぼ無い。(笑)

大須賀:(笑)ライブハウスのお客さんって今ばっくり分かれたなって感じてて。長くやってるバンドにはそれなりの年齢のお客さんが居て、けど若い子とかはあんまり居ない。逆もそうで若い子の観に行くバンドのお客さんってやっぱり大人の年齢の人達は少なくて。それってやっぱり難しいなって感じる時もあるけど、ライブハウスもバンドもそこに関して凄い挑戦し続けてるなって思ってて。若い年代のお客さんも、上の年代のお客さんも混ぜこぜにしたいって言うイベントをやってるなって。そこはやっぱり大事にしたいんだろうなって思うんです。そこをもっと知って貰いたいすよね。その為に頑張るし。

玲央奈:そりゃね。ライブハウスに来てくれたら誰でも嬉しいよね。だから個人的にはもっとグチャグチャしたい。パンクとかハードコアとか見たことない人達が「何この煩い音楽」っていう奴とかもっともっとやってかないとな、って思うし。もっともっとグチャグチャして行きたいなって。

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