Vol.2

paionia 高橋勇成 孤闘の末に開拓した”イマ”

左から高橋勇成(paionia)、オオ=スカ(Teenager Kick Ass)

 

音楽を聴く時、人は果たして本当に一人なのだろうか。

スマートフォンが普及した昨今。現代人である僕らは、世界中のどこに行っても名も知らないどこかの『だれか』と繋がっていて、その名も知らぬ『だれか』の視線を感じながら生きている。

それは音楽においてもそうであって、SNSなりなんなりで多数の『だれか』が良いと訴えるものが良いものと俺達は無自覚に錯覚する時も多々ある。例えば『バズる』なんて言葉が生まれ往来しているのはその最たるものなのだろう。あまりに俺達は日々、無感情に音楽に向き合っているのかもしれないと最近よく思う。

良い悪いは別として今の音楽シーンに大衆心理は切っても切れない関係なのだろう。『だれか』の歓声が、拳が高らかに上がっていなければ、その音楽が良いのか悪いのかすら、誰も自分だけでは決められてすらいないのかもしれない。

そんな現代にて、”本当の孤独”を[paionia]というバンドが知っている。

『開拓者』という意味を持つ彼らの音楽には『だれか』は居ない。そこに居るのは『自分』と『君』と『街』という三者のみ。一見すると閉鎖的かも知れない彼らの唄は、実はどこまでも我々を見つめ、その『暮らし』に意味はあるのか?と何度も問い続けている。

その音楽の行き着く先、その果て、結成10周年にして彼らが描いた『白書』というアルバム、そして、新たな『白書』へと繋がる『きれいすぎた/bed』と言う一枚の配信音源、その全てをvocal&guitarである高橋勇成が語ってくれた。

text&photo:オオ=スカ

 

“去年から止まりたくない感じはずっとあって”

大須賀:これまでに『白書』のインタビューとかあったんですか?

高橋:インタビューはないかも。おとぎ話の有馬さんとの対談は有ったけど。

大須賀:あ、そうなんすか。

高橋:UK(UK project)に居た頃はあっちがそういうの取ってきてくれるんだけど、今はもう自分らだけでやってるから、敢えて頼んだりはしないし。

大須賀:有馬さんとの対談(https://www.paionia.info/blank-16)は誰企画だったんですか?

高橋:あれは知り合いの写真家の服部健太郎と立ち上げた企画なんだけど、メンバー二人と服部くんと三人で文字起こしして。結構話も前後しちゃったりして…。まとめるの大変だったね。

大須賀:でも普通に話したらそうなるんすよね。思いつきで話したりするし。でもそれが面白い話だったりするから切れないし、でも切らないと全くスマートじゃ無いし(笑)

高橋:そうなんだよね、スマートでは無いんだよね(笑)

大須賀:『白書』に話戻すと、個人的にpaioniaのキャリア的にこの短いスパンの中で『白書』『きれいすぎた / bed』と二枚音源出すって今までなかったなぁってイメージなんですけど。

高橋:そうだねぇ…。(レコーダー見ながら)ってか、これってもう始まってんの?(笑)

大須賀:始まってるっす(笑)

高橋:まじか(笑)。まぁ、別に短いとも長いとも思わないけど、去年から止まりたくない感じはずっとあって。フジロックとかもあったし。

大須賀:あれってなんで応募したんですか?

高橋:音源出来たし応募するか、みたいな。そしたら決まってくれたって感じ。

大須賀:あの時のライブ映像良いっすよね。

高橋:あれね(笑)。もうねぇ、なんで最後の曲にしたんだよ、っていうね(笑)。朝からずっと居たから砂が凄くて、喉がもうジリジリで。声全然出てなくて…。

大須賀:あれって深夜何時ぐらいでしたっけ?

高橋:深夜一時半ぐらいだったね。大須賀君はフェスとかいったりする?

大須賀:いや、行ったことないです。

高橋:俺はもう行きたくない(笑)

大須賀:行きたくないんすか?(笑)

高橋:もう山の中でトイレとかも仮設で。ザァーっと人も並んでるからさ。あーいう感じ、苦手だわ。

大須賀:(笑)去年は『白書』のリリースがあって、フジロックがあって、で年末にリリースした『きれいすぎた/bed』に繋がると思うんですけど、あれはなんで配信限定だったんですか?

高橋:まぁ今の俺らの状況的にそんなに金があったり後ろに大人が居るわけでもなくて。このご時世聴いてもらえる事が大事だから、今回は配信って感じにしたかなぁ。俺も割とCDで欲しい人だけどそこに変なこだわりとかも無いから。

大須賀:そうなんすね。『白書』って全部新録なんすか?それとも前から録りためてたりしてたのか。

高橋:モノ自体は出すってなってから全部録ったよ。でも、実は全部録り終わってからリリースするまでの期間が結構空いちゃって。前のドラムの一太君がドイツ行くっていうのは決まってたから録りのリミットはあったんだけど。でも色々あって出すのは結構ずれ込んじゃったんだよね。モノ自体はもう去年の頭にはあった。

大須賀:リリースしてもうどれくらい経ちましたっけ。

高橋:去年の6月だから、半年ぐらいだね。

大須賀:そう考えると『白書』と『きれいすぎた/bed』出すまでのスパンって本当に短いんすね。

高橋:そう言われるとそうだね。

大須賀:この前のおとぎ話とのツーマン企画も、自主企画としては三年ぶりとかでしたもんね。去年はずっとバンドが動いてる感じというか。

高橋:そうだね。ワンマンはちょこちょこやったりしてたけど。

大須賀:俺がpaioniaをちゃんと知ったのが、元さん(『天国』という映像チームを率いるMV監督)がMVとかライブ映像とか撮ってるのを見て知ったって感じだったんですけど。それこそワンマンの時のライブ映像とか。あれはどういう繋がりだったんですか?

高橋:Wanna-Gonnaってバンドのベースの高山くんが俺らのアートワークとかデザイン関係全部やってくれてて。で、MV撮りたいって話したら元君絶対に良いっすよ、って言ってくれて。それでって感じだね。

大須賀:でもその当時ってまだ元さんあんまり映像とか撮ってませんでしたよね?

高橋:いや、キイチビールの『パウエル』とか撮ってた。まだ撮り始めたくらいだったけど。そこから結構お世話になったなぁ。

“…本当に昔の俺、ダメだったんだよ”

大須賀:paioniaの最近の活動だと、リーガルリリーの、特にほのかちゃんとの関係性が印象的だったんですけど。リーガルリリー企画で2manしたり勇成さん企画で二人で対談したり。でも、個人的にリーガルリリーと繋がるんだっていう意外性もあって。paionia自体あんまり歳下との絡みがあったりするイメージもなかったので。

高橋:全然絡んだ事無いね(笑)歳下も歳上も。

大須賀:リーガルリリーとはどういう繋がりだったんですか?

高橋:対バンしてから仲良くなったわけじゃ無いんだけど、ほのかちゃんから何度かラブコールがあって。それで彼女たちの企画に二、三回呼ばれてたりして。2manもしたし、Saucy Dogを交えて3manしたり。てか、Saucy Dog売れたなぁー(笑)

大須賀:めちゃめちゃ売れましたね(笑)。それまで歳下とかとの絡みは全く?

高橋:なかったなぁ。ほのかちゃん然り、NEW LINK!(下北沢五会場で行われるライブハウスの若手ブッカー五人によるサーキットフェス)関係が色々繋げてくれたりしてやっとって感じ。本当に最近だね。歳上とかとの絡みも今迄全然無かったし。

大須賀:逆に、paioniaって同世代どこら辺なんですか?

高橋:みんな売れてんだよ。きのこ帝国でしょ、indigo la Endでしょ、あとplentyとか。

大須賀:確かにみんな売れてる…(笑)。plentyとかってWarp(吉祥寺Warp)とかでやったんですか?

高橋:そうそう。paioniaの初ライブもWarpだった。それまで俺元々ポストハードコアバンドみたいなバンドのドラムやってて。

大須賀:え?(笑)勇成さんが?

高橋:そう(笑)。だから元々Warpには出てて。paionia組んで、初めてライブしたのもWarpだったね。

大須賀:そこから今年で結成11年目ですもんね。paioniaって今でもUKが手伝ってくれてるって感じなんですか?

高橋:いや、もう手伝ってもらってない。今はhmc studioってレコーディングスタジオの池田さんってレコーディングエンジニアの人のレーベルで出してるね。

大須賀:池田さんのところから出してるんすね。当時UKの時に仲良かったバンドとかって居ました?

高橋:きのこ帝国、ぐらいかな。でも、当時は全然仲良くなかったかもしれない(笑)。今の方が話せると思う。ほんとに昔の俺ダメだったんだよね。

大須賀:人と仲良くできない(笑)

高橋:誰とも全然話さなかったんだよね。当時は。

大須賀:やっぱり…。俺も初めて会って話すまで勇成さんのイメージそういう感じで。本当は今回のインタビューとかも受けて貰えると思ってなくて。初対バンの時も話せないと思ってました(笑)

高橋:酷いな俺のイメージ(笑)。そんな事無いんだけどなぁ…。

大須賀:いや、でもそこが良くて。MCの感じとかも素直というか、何というか(笑)

高橋:MCはねぇ…。昨日も(この取材の前日にpaioniaは鹿の一族と2manを行った)凄い事言っちゃったもんなぁ。サファリパーク行った話とかした(笑)

大須賀:2manで(笑)。俺らと対バンした時も菅野さんに『お前まじでベース弾いてるだけだもんな』って言ってましたよ。

高橋:そんなこと言ってたっけ(笑)。やばいなぁ。

大須賀:菅野さんも相当変わってますよね。人として特異というか。

高橋:あいつこそ一番ヤバイよ。アレの全容が世に出たら、ちょっとやばいね(笑)

大須賀:(笑)二人共、同郷ですか?

高橋:そう。高校の同級生。俺は浪人したからあいつが先に東京出てた。で、一年遅れて俺が東京出てきたときに、ヤマハ主催のミュージックレボリューションっていう大会みたいなのに遊びで出てみようかって話になって。それでpaionia組んだのが始まりだね。

大須賀:paioniaって最初の頃から割と今の形というか、唄が強い感じだったんですか?

高橋:唄だったね。とにかく唄だった。元々ギタリストだったから曲とかはずっと作ってたんだけど、それは唄なしの宅録みたいな感じで。当時のメンバーにはこれに合わせて勝手に唄って、って言ってた。

大須賀:じゃあ、paioniaが『唄を作る』って事としては初めて?

高橋:そうだね。初めて歌詞とかも書いて。丁度、大学入ってからぐらいだな。

大須賀:てか、11年で出してる音源、本当に少ないですよね(笑)

高橋:ね(笑)やっと初フルアルバムだもん。もっとポンポン行くと思ってた(笑)

大須賀:あれってあんまりリリースしたくないなって思ったから意識的に少ないのか、それとも気付いたらリリース自体が少なくなっていたのか、どっちなんですか?

高橋:うーん、俺らの場合、ドラムの問題がやっぱりあって。後は、UKから二枚出して売り上げ次第みたいなところがあったんだけど、結局これだと三枚目は出せないわなって感じになって。その上ドラムも安定してなかったから。でも、俺らとしては例えUK以外であったとしてもリリースしたかったし音源有ってなんぼだとはずっと思ってたし。それで別に出してくれる人探してたんだけど、そしたらhmcの池田さんが名乗り出てくれて。でも、やっぱり出すまで時間は結構かかっちゃったね。

大須賀:そんなにすぐにどうにかできる問題でもないですもんね。

高橋:そうなのよ。でも、その池田さんのレーベルも俺らの為にわざわざ立ち上げてくれて。<今のところ>Wanna-Gonnaと俺らだけのレーベルなんだけど。リリース自体は最初がWanna-Gonnaで。

大須賀:すげー、わざわざ立ち上げてくれたんすね。

“他のバンドとか見てて「あーこの人達は本当はこーいう事やりたくてやってるわけじゃないんだな。偉いな」って。でも、良く考えてみるとそれって全然偉くないじゃん”

大須賀:UK居た頃は、paioniaはDAIZAWA RECORDSですよね。確か、きのこ帝国も。

高橋:うん、そうだよ。

大須賀:うわー、俺からしたら夢のDAIZAWAですよ(笑)

高橋:いや、俺も夢のDAIZAWAだったのよ。シロップめちゃ好きだったから。

大須賀:シロップもか。そう言えばきのこ帝国も代沢まつりとか出てましたもんね。

高橋:そうね、懐かしいなぁ。

大須賀:個人的にpaioniaがUK入ってたって知ったの結構最近だったんですけど、俺の中でUKのバンドのイメージって割と上品というかお洒落なイメージがあって。そこがpaioniaの土臭さ、泥臭さ的なバンド像と結びつき辛くて。paionia自体、もっとバンドとして自生してるイメージというか。だから結構意外だったんですよ。

高橋:まぁね。でも、今でこそ全部自分たちでやって一歩一歩進んでるけど、昔は全部丸投げだったよ。UK が最初に入ったレーベルだったし。今、改めて思うとその状態で売れなくてよかったなって思う。やっぱこうやって地道に進んでる過程があって良かったなって思うし、昔みたいに言われるがままにやってたらもっとしょうもない感じになってたと思うんだよね。

大須賀:SNSのプロフ欄にも書いてあったんですけど、それこそ今のpaioniaって”自生”してるんですよね。俺からしたらそのイメージが強い。

高橋:あれはね、ベースの菅野の言葉なんだよね。

大須賀:あ、そうなんすね。インタビューとかで菅野さんの話聞いてると、勇成さんの感じ方なり考えた方なりは唄や詩を通じて伝わって来るんだけど、菅野さんって言ってることはとても共感できるけど、凄い視点からモノを見てるなぁって言うか。独特の視点でモノ見てるなぁって思って。

高橋:そうなんだよ。普通じゃないんだよ。彼にインタビューとかしてみたいもんな(笑)

大須賀:面白そうっす(笑)菅野さん含めて、paioniaの音楽ってほんと素直だなって思うんですよ。でも、意表を突かれる。とても自然に。奇をてらった歌詞を書いてるわけでもないけど、凄く心に刺さる。それこそほのかちゃんも『私はその人描いてる音楽の狙いが見えちゃうと感動できないんです』って勇成さんとの対談で言ってましたけど、paioniaはとても自然な在り方で音楽をやっていて、そこに色んな人が惹かれている気がして。

高橋:素直にはやってるね。というか、それしか出来ない。

大須賀:そこが好きなんですけど(笑)でも、言葉悪いかもしれないけど凄い孤独に見える。paioniaの音楽には演奏者であり作曲者である三人しかいない。お客さんはそれを偶然通りがかって垣間見てしまっているだけのような。それって特殊な在り方だなぁと。バンドってやっぱりやっていけばいくほど自分以外の人間とか、何か他のモノや感情が介入して来ると思うんです。簡単に言うと『売れるためのなにか』って言葉に集約されるんですけど、paioniaはそこは理解した上で、でもそこに関して『俺たちはわからないな』って言ってる気がして。

高橋:本当、そこは凄いシンプルで。UK居る時も勿論色々言われたし、でも俺たちは『わからない』んだよね。売れてないことへの苛立ちとか焦りも勿論あったけど、俺らは『売れる為の』何かは絶対に出来ないと思ってた。あとまぁそういう事するぐらいだったら俺は別にやんなくて良いと思ってるから。実家帰って適当に仕事してた方がマシなんだよ。

大須賀:おお(笑)

高橋:みんながおんなじ事やっちゃったら選択肢として何にも無くなっちゃう。俺らにしか出来ない事を突き詰めて行くしかないって思うんだよね。でも、去年ぐらいからライブとか曲の在り方が閉鎖的だなって感じた事もあって。もっと届いて欲しいなってその時に思ったというか。そこから色々と変わった。

大須賀:そうなんすね。でも俺は閉鎖的とはまた別の孤独を感じて。さっきも言ったんすけど、見ている人達はpaionia3人の作り上げてる音楽なり表現を偶然見てしまっているだけって感じがして。言ってしまえばそれは閉鎖的なのかもしれないけど、paionia自身が意図的に閉じてるわけじゃないんですよね。そういう在り方のバンド居なかったんですよ。それが衝撃だった。

高橋:そうなんだ。

大須賀:ライブでライブハウスにいる時って、俺とかは”一人になりたいな”って思って行くんですけど。でも、それってある意味不可能じゃないですか。”他者”は確実に存在してる。そこに視覚的情報として他の誰かが盛り上がってたり手が上がってたりとかって情報が入ってきたら、あんまり良いバンドじゃないなって思ってても『みんな好きなんだな』ってファクターを通して見ちゃうって言うか。でも、paioniaはそれが全くなくて。盛り上がってないとかじゃなくて、素直に孤独になれたんですよ。1人にやっと成れたんだなって思えた。

高橋:そう言う効能があるんだな、俺らのライブ(笑)まぁ俺たちを見に来てくれてる人ってみんな別に盛り上がったりしないからなぁ。でも、大須賀君もそうなのかなと思うけど、結局のところ自分が見たいライブをしたい、自分が聴きたい曲を作りたい。それをやっているだけなんだよね。

大須賀:そうっすね。自分が興奮しない曲、ライブじゃ誰も興奮できないと思います。

高橋:でも俺昔そんな事思ってなかったよ。オオスカくん今二十一とかでしょ、すげーな。対バンとかは上とやる事の方が多い?

大須賀:うーん、同世代とやるようになったのは本当に最近って感じです。それまでずっと同世代とは分かり合えないなって感じてたけど、同世代の中にもおんなじ考え方を持っているやつも少なからず居て。別に馴れ合う気もないけど話してて価値観とか共有できて。そうだよな、辛いよなって思えたり。で、そういう奴らが総じてpaioniaを好きって言うんですよね。さよならポエジーのアユさんとか。

高橋:そうなんだ。嬉しいなぁ。アユ君ともこの前京都でやっと話して、凄い気に入ってくれてて。でも、やっぱそういうの全部去年から始まった気がするなぁ。『白書』ってアルバムから始まった感じ。大須賀君と対バンした時のmcでも多分言ったと思うけど、セールス的には一番売れてなくて。枚数的にはUKから出した二枚の方が全然売れてるんだけど、でも、その一枚一枚が一人一人にちゃんと届いてる感覚があって。しっかり受け取ってもらえてるなってやっと思えた。

大須賀:でも、UKから出した前二枚もリリースした当時は音源として納得できてたんですよね?

高橋:うん。その都度はね。でも、音源なんて俺絶対後々後悔するものだと思ってるから。やっぱり当時はUKがいたから、俺らは音楽を作るだけだったんだよ。でも、今はCD出すまでに自分達でやらなきゃいけないことがたくさあって。そういうのを経て凝縮された感じが今回あって。

大須賀:俺自身『白書』聴いた後に、前にリリースした二枚を聴くとまた違う感じに聞こえて。逆にレンジが狭くなった感じというか。無理に誰かに何かを伝えようというよりかは、今を素直に描こうって感じがして。素直に取り繕わない音楽をやり続けてる結果なのかもしれないけど、そういう意味も含めて『白書』が完成されすぎてて。別に作ってもないのに、次かぁ、みたいな気分になりました(笑)

高橋:プレッシャーだよ俺も(笑)まぁ、前二枚もそうだけどアルバムのコンセプトとか決めてそれに対して曲を書いたりしないからそこは別に変わってないんだけど。でも、本当にこれはいいなって感覚が今回は特にあって。逆にプレッシャーだもん(笑)

大須賀:本当に凄いアルバムだと思います。UK離れたりドラムが安定しなかったりして、今がpaionia的に一番安定してる時期じゃないのかもしれないけど、その状態で『白書』作れたのは本当に凄いな、と。

高橋:そうだね。今回『白書』を池田さんが出してあげるよって条件として、本当に貴方達はいい音源を作ることだけを考えて下さいって言われて。その話の前に池田さんと2人で飲みに行った時に俺泣かされたもん、ボロボロに(笑)

大須賀:ボロボロに(笑)

高橋:やっぱ、その戦略とかさ。音楽と関係ない所ももっと考えなきゃいけないよって言われて、俺はそれに対していや違うっすよ!そうじゃないっすよ!ってずっと言ってた。でも、池田さんの言ってることもわかるし、それを論破できない自分にカァー!ってなって(笑)後から聞くと、池田さんとしてはその葛藤があった上で自分のやりたい事を譲らなかったから出そうって思ってくれたらしいけど。売れる為のテンプレというか、そういうのもやろうとすればできるのかもしれないけどね。でも、他のバンドとか見てて”あーこの人達は本当はこーいう事やりたくてやってるわけじゃないんだな。偉いな”って、良く考えてみるとそれって全然偉くないじゃん。なんでそれが褒められんのって思う。

大須賀:やりたくない事やってたらなんか違うと思います。セールスとかは統計の話というか。個人的にはあんまり音楽に関係ないんですよ。ビジネスとしてやってくとしたら必要なんですけど。でも、本当はあまり音楽自体には関係のない話なのにバンドやってたらそれに当然苛まれるし、悩んで前に進めなくなったりする。そこでpaioniaはどんどん深いところまで行ってるって思うんです。

高橋:難しいよね。俺は音楽は選択肢だと思うから、仕事にするんだったらそれをある程度考えなきゃいけないんだろうし、本当に好きなものだけをやりたいんだったら趣味でやればいいんだろうけど、でもそういう事じゃないなぁとも思うし。

大須賀:それこそpaioniaと同世代できのこ帝国とかは逆の道のりに進んだなと思ったというか。『売れる』とかではもちろん無いんだけど。paioniaは一番最初にバンドをやろうって思った気持ちを突き詰め続けてるバンドだと思うけど、きのこ帝国は変わり続けてるバンドだなと。でも、ちゃんとそこに一貫性はあって。『変わらなかったバンド』と『変わり続けたバンド』というか。

高橋:そうだね。佐藤さんとも前に話したけど、彼女の中で『共感』ってものがとても大事なキーワードで。だからこそ今のバンド像になってると思うんだよね。

大須賀:優しくなった、と思うんです、きのこ帝国は。そこがとても僕は好きで。

高橋:俺はアレが本来の彼女だと思うんだよね。それこそ昔は尖ってたりして近寄りがたかったり暗かったりしたけど、俺はずっとアレはちょっと作ってたんじゃねぇかなって(笑)。今は本当の自分を出してるな、って思う。

大須賀:2バンドの関係性凄い素敵です。お互い立ち位置は変わったけど、今でもpaioniaのワンマンで佐藤さんが唄ったり、きのこ帝国の企画にpaioniaが参加したり。お互い慣れ合う気は無いけど、認め合っている感じというか。

高橋:仲良いとはまた少し違うしなぁ。仲良いって言えるのはSentimental boysとか、かたすみとかだ。

大須賀:かたすみもなんすね。

高橋:Warpでまだpaioniaがド初期の頃から仲良いね。山梨の企画呼んでもらってたりとか、今はベースの米山くんとはバイト先も一緒(笑)

大須賀:まじか(笑)米山さん、この前対バンした時ライブハウスの壁の吸音材壊してましたよ(笑)

高橋:え!?米山君が!?

大須賀:一回ぶつかって吸音材取れちゃってPAの人が直したんですけど、またぶつかって完全に剥がれてて(笑)ライブ終わった後にめちゃめちゃ謝ってましたけど。

高橋:なんだそれ(笑)無茶するなぁ。センチもそうだけど、歌詞が本当にいいんだよね。

大須賀:土の匂い、のするバンドだなぁってイメージです。

高橋:売れなさそうな感じがするよね(笑)でも、彼らはバンドに本当に人生賭けてるから。櫻井くんは本当にそういう人だし。売れようって話はよくしてるけどね(笑)

"クズなところも含めて自分を正当化したいんだと思う"

大須賀:paioniaの歌詞の中でよく”街”や”暮らし”って言葉が出てくると思うんですけど、勇成さん自身東京生まれじゃないじゃないですか。どういう視点で描いてるのかなって。

高橋:うーん、俺にとって凄い影響力なんだよね、”東京”ってものが。やっぱり田舎から出てくると戦場ってイメージがあるから。

大須賀:最初からテーマとしてあったんですか?

高橋:いや、本当に最初の頃とかはただただ失恋。失恋の曲しかなかった。1stとか全部失恋の曲だし、殆ど1人の特定の人に向けての(笑)

大須賀:まじすか(笑)俺も割とそうなんすよね…失恋というか。

高橋:あ、Teenagerも?まじか(笑)なんなんだろうね、あのエネルギーって。

大須賀:本当に凄いですよね、めちゃめちゃ打ちのめされるじゃないですか。

高橋:もうやばい!本当に曲作れてよかったなって思う。俺らは曲として放出出来てるから救われる部分もあるけど、一般の人とか放出出来ないし。どうやって立ち直ってんのかなって思う。

大須賀:そうっすよね。しかも、その俺たちの曲を聴いて感動してくれてる人達もいる。言っちゃえば本当に二人の世界じゃないですか。『ぼく』と『キミ』だけしか居ないし、それを描いてるだけなのに、それに『救われました』って言ってくれる人がいるってのも凄いなっていうか。

高橋:ね。オオスカ君も結構エネルギーになってるんだ。

大須賀:バンド見てあぁ売れてるなぁとかかっこいいなぁとかで打ちのめされたり日々の生活の些細な違和感とかで葛藤したりするけど、それ以上に失恋の打ちのめされた時のエネルギーが凄すぎるというか。答えが欲しいのに永遠に出ない。

高橋:いや、答えは出てるんだよね。それをずっと見てることしかできない(笑)そりゃあ失恋ソングが世に溢れるなぁって思う。だから、ハッピーなことを曲に出来ないよね。エネルギーの量が全然違うじゃん。

大須賀:ハッピーな事もあるんですけどね、ハッピーな事って楽しかったって所でもう終わってるんすよね。それより先に行けない。

高橋:曲にしようと思わないよね。

大須賀:そうっすね。でも、失恋がテーマだったの意外かも。勇成さんの歌詞読んでやっばり”暮らし”って物のイメージが強かったというか。失恋とか恋愛の匂いも感じたけれど、paioniaの恋愛観の描き方が少し他の人達とは変わって見えて。そこまで悲しい事として描いてない気がするんですよ。彼女がそこにいて、俺はそう思っていた、けれどそこには何も無いし何も起こらないって言う。そこに当然感情の描写は無いのに、とても詩的で。それってめちゃめちゃ難しい。感情の描写してないのに感情を揺さぶるっていう。『rutsubo』にある曲で『恋人は夜に来て、朝には帰る』的な歌詞とか特に。

高橋:あ、それは俺の曲じゃないです(笑)菅野の曲だね。

大須賀:そうなんすか?まじか(笑)意外っすね。菅野さんも勇成さんと同じくらい恋愛とかにエネルギー感じてるんすか?

高橋:あいつはね…わからん。何考えてるのか。なんなんだろうなぁ、あいつ(笑)今度あいつに二人でインタビューしたいな(笑)

大須賀:10年一緒にいるのに(笑)

高橋:あいつ、一見すると女に興味ないように見えるけど実は『君』っていうものにめちゃめちゃ執着があるんだよね。

大須賀:意外だなぁ。そういう歌詞書くと色んなこと思い出して基本的に落ち込む事が誰だってあると思うんですけど、菅野さんはそういうのが無いっていうか。別のベクトルっていうか。

高橋:一般的じゃ無いよね、感覚が。

大須賀:それに対して勇成さんがこいつすげーなって思ってるんだろうなって気もするし。

高橋:そう思ってる。結局俺の音楽が今あるのもあいつが始まりだから。あいつに教えてもらった音楽聞くまで全然別の音楽の人だったし。

大須賀:何聴いてたんすか?

高橋:ビジュアル系の人間だった(笑)中学くらいからギターやってたんだけど、誰も聴いた事ねぇ音楽聞きてぇなって思って、それで。高校の時はビジュアル系のバンドやってたし、化粧バチバチにして(笑)でも、それがなんか違うかもって気がし始めた時ぐらいに菅野が色々教えてくれたりして、それ聴いたらビジュアル系だめじゃん…こっちの方がいいじゃん…ってなったんだよね。それで今に至るっていう。最初はゆずとかだったけど、そこからいきなりビジュアル系に行って、その後に急にゆらゆら帝国とかに行った(笑)

大須賀:すげー遍歴っすね(笑)そう言えば、HPのプロフ欄に『paioniaというバンド名はゆらゆら帝国の曲名に由来している、らしい』って書いてあって(笑)

高橋:そうなのよ。当時二人の間でその曲が流行ってて。

大須賀:paioniaってバンド名も結構凄いっすけどね。開拓者、って(笑)

高橋:だよね(笑)そんな意味別にないんだけど。いやでも、あいつこそ本当に演技とかできないよ。一番アーティストだよあいつが。感じ方が全然人と違うし。

大須賀:paioniaにおける菅野さんの存在って全く無視出来なくて。強すぎるというか。勇成さん前に言ってましたけど、『ワンマンバンドが好きじゃない』って。

高橋:そうね。まずバンド自体、俺の要素だけで成り立ってないから。例えば、曲作るときにベースのフレーズとかオオスカ君が考えてる?

大須賀:いや、任せてるってかんじです。思ったことは言いますけど。

高橋:だよね。俺もそうなんだけど、その二つの個性が起こす化学反応に面白さを感じてるから。ワンマンバンドってなんかね、面白い要素がそれだけ減っている気がするんだよ。三人なり四人なりいるんだったら全員が面白い方が絶対に面白いし。まぁでもオオスカ君だいぶ個性として突出してるけど(笑)

大須賀:いや、俺は普通ですよ。普通普通って周りに言われ続けてきて育ってきたんで。それで刷り込まれてるイメージもあると思うっすけど。天才とか変人じゃないし。でも、勇成さんは俺の中で”凡人の事も理解できる天才”って感覚の人なんですよね。

高橋:あー、それはそうかも。俺は天才でも変人でも無い代わりにもっと普通の人達の感覚に近い所で居れるとは思う。そこは自分の強みだと思ってるし、そういう音楽がやれれば良いと思ってるから。

大須賀:でも、勇成さんって別に共感を求める事はしないし、俺はこう思う、って言う宣言をしてるだけって言うか。そこに計算は存在しない気がして、それこそ”白書”なんですよ。音楽を生業とか依り代にしてる俺らみたいな人間からするとそれがとても心地いい。

高橋:本当はもっと色んな人に聞いて欲しいけどね(笑)でも嬉しいなそれは。ジジイババアになるまで持っていける音楽、っていうのをやりたいと思ってるから。

大須賀:ですよね。paioniaって全年齢層に刺さると言うか。

高橋:あーそれは本当に結構あって。俺より歳上の全然年配な人達とかもちゃんと聞いてくれてるんだよね。ありがたいって思う。でも、最近特に思うけどオオスカ君ぐらいの年齢の子が観に来てくれるってやっぱりまだまだ少ないなって思うんだよな。オオスカ君とかには届いてるけど、それこそライブにタオル巻いて遊びに来てるような子達には届いてないなぁと思う(笑)タオル持ってこなくて良いから(笑)必要ないし。

大須賀:(笑)

高橋:例えばこれ載せられるかわからないけど、仲良くさせてもらってるけど灰色ロジックとかはオオスカ君達の世代にも刺さってるなって感じる。十年一緒にいる俺らがずっと思ってる”わかりやすさ”に起因してると思うけど、羨ましいなと思う。

大須賀:あー確かに。灰色ロジックって俺らの世代のバンドにしては”このライン超えたらアウトだな”みたいなところの紙一重なんだけど、珍しい形で成り立っているバンドだなと思って。紙一重なんだけどそれがめちゃめちゃでかい。だから、凄い良いんすよね。paioniaと仲良くするのもわかるなぁと思います。

高橋:接しやすいよね。半田くん(guitarとvocal)とか。オオスカ君って人柄と音楽って割り切って考えられる?俺最近無理だなーと思う瞬間があって。

大須賀:うーん…無理っす。音楽って『説得力』だと思ってるし。勇成さんがめちゃくちゃ遊び人でアッパーな人だったとしたら、ちぐはぐすぎてわけわからなくなっちまうっていうか。

高橋:だよね(笑)

大須賀:さっきのレーベルの人に色々言われてって話もそうでしたけど、知り合いのバンドの人柄も理解した上で本当にこいつらがこーいう音楽とか表現とかしたいのか?って思うときが良くあって。そこの説得力というか重みがバンドって凄い大事だと思うんで。ワンマンっていうかバンドじゃないバンドとか全然好きじゃないんですよね。

高橋:例えば嫌いなバンドとかいるの?

大須賀:うーん、好き嫌いという以前に殆ど興味がないんすよ。嫌いになるってものすごくエネルギー使うんで。

高橋:そうなんだよね、好きとか嫌いとかじゃないんだよね。興味がない。余程の実害がない限り、嫌いとか思わないもんな。

大須賀:まぁ歯痒く思う部分はありますけど、そんな事思ってる時点でまだガキだなと思います自分は。

高橋:まぁねぇ。大人になれないところもあるけどね。でも、なんやねんこいつら!みたいに思う連中もいるからなぁ。

大須賀:勇成さん、意外とそう言う感覚若いですよね。Twitterとかの発言とかインタビューの時とか。この前ツイートで若い奴らしっかりしろよ、とか言ってたり。

高橋:(笑)そうなんだよねぇ。それでそのツイートを若い子にイイねされるんだよ(笑)サニカーのハネダ君とか。

大須賀:そうなんすね(笑)サニカーって対バンとかあったんですか?

高橋:いやまだした事ないね。

大須賀:俺らの世代にpaioniaが刺さるってのはとても希望なんですよ。イイ流れというか、俺が希望感じるのも変な話なんだけど。

高橋:いや、それは俺からしても希望だよ。俺らみたいな音楽がそれこそ誰かの青春になれてるとしたらそれはとても希望だな。

大須賀:なってるな、と思います。日々の生活の中で自分が酷く暗い人間だなって思う時があるんですけど、どうしようもない人間が救われる音楽ってそんなに多くないんですよ、今の時代。

高橋:そうなんだ。

大須賀:でも、それは多分少なからず自分以外の同世代も感じてると思ってて。俺らの世代って、とっても一人でいることを大切にするって言うか、他者と分かり合いすぎる事、共感しすぎる事に疑いとかを感じ始めてる世代のように感じてて。みんながいいと思うものが果たして本当に良いものなのか?ってなってるというか。

高橋:少し昔と比べて変わっているのか。

大須賀:だからこそ、分かりやすくライブで手が上がったり盛り上がったりアップテンポだったりする『他者と共有する音楽』とはまた別の、例えばリーガルリリーだったりさよならポエジーだったり、そして、paioniaだったりする『孤独になれる音楽』が台頭し始めてる気がしてて。本当に希望に感じてるんですよ。誰にも左右されず、音楽を聴いてるって感覚だけで聴ける音楽が正統な評価を受けてるってのが。エンタメ性の強い音楽カルチャーを否定するわけじゃないですけど、『孤独な音楽』の生き場所も産まれ始めていると思うんですよね。

高橋:やっぱりそもそも、最初の音楽体験ってのがライブじゃないからね、普通。家でCDで音楽を聴くっていうのが最初だから。

大須賀:そういう時ってどうしようもなく一人じゃないですか。

高橋:そう、一人なんだよね。だから俺達自身はライブを前提にして音楽を作ってないんだよね。一人で聴きたい音楽を作ってるから。

大須賀:そうですよね。そこ訊いときたくて。昔のインタビューとかドキュメンタリーとかでも『ライブって物に対して意味性を求められない』って言ってたりしたじゃないですか。でも、今どう思ってるのかなっていうのもあって。年月を経てきて何か変わったのか、何も変わらなかったのか。

高橋:うーん、明確ではないんだけど、音楽として見た時に”人の感情”ってものが入った状態でそれをより良く出せるってのはライブかなって今は思う。やっぱり、ライブの方が唄えるんだよね。レコーディングの時全然上手く唄えなくて。あんな変なところで唄えって言われても100パーセント出せないっていうか、それが出るのがライブっていうか。だから、今はライブがいいなって言うのはわかる。昔とは変わったと思う。当時は音源が全てだと思ってたから。

大須賀:今のpaioniaは、昔のpaioniaとはまた持っている感覚が違う?

高橋:違うね。変わらないところもあるけど、変わり続けてる。結局、なんで変わってるのかってのも全部音楽を広くいっぱい色んな人に聞いて欲しいって所に帰ってくるから。その為のライブってのが今はあって、それを実現する為に変わっていってるって感じだね。

大須賀:『白書』を出して色んな意味でpaioniaというバンド自体が変わったんですね。

高橋:paioniaもそうだし、俺自身めちゃめちゃ人間が変わったんだよ。俺本当に誰とも話す気なかったから、昔とか特に。ライブとか終わったら即行で帰ってたからね(笑)

大須賀:(笑)俺らと対バンだった時も打ち上げまで居てくれたじゃないすか。だから結構びっくりして。ライブも見てくれるし。

高橋:そりゃあ見るよ(笑)!でも、それは本当に変わったなぁ。でも、変わらない人(ベースの菅野氏の事)が俺の隣にいるから。それが本当に大事で。忘れかけてた物を思い出させてくれるんだよ。

大須賀:しかもそれがメンバーにいるのが強いですよね。

高橋:そうね。どうしても三十ぐらいにもなれば社会に迎合していくからさ。でも、変わらないで迎合しないっていう変態がいるからね。しないっていうか、出来ないんだけど要は。本当にあいつは社会で生活とか出来ないと思うよ(笑)バンドで売れてくしかない(笑)

大須賀:それは俺勇成さんにも思うっすけど(笑)

高橋:いや俺は普通だよ!

大須賀:わかるんですけど。でも、普通の人に限りなく近いけど普通の人が持ってない視点と思い切りがあるって言うか。歌詞として、現実的にうまくいかない自分とか自分がとにかく自堕落だという葛藤は普通は描かないんだけど、勇成さんはそこも含めて歌詞にするっていうか。

高橋:あーまぁそれはそうかも。失恋の時と一緒で自分を救いたいだけなんだと思う。クズなところも含めて自分を正当化したいんだと思う。

大須賀:それに救われてる俺らってのが確実にいるって思うんですよね。

高橋:ありがたいけど、イメージって怖いねなんか。実はめちゃめちゃ遊びまくって女抱きまくってたらダメなんだもんな(笑)

大須賀:そりゃまぁ(笑)

"素直に音楽が作れなくなったら辞める、そこが終着地点だと思う"

高橋:オオスカ君は一人になっちゃったわけでしょ?それはなんで?

大須賀:うーん、まぁ一言で言うと俺がクソって話なんですけど。ある日マネージャーがスタジオ前に打ち合わせしたいんだけどいい?って聞かれて。そしたらまぁ二人がこれ以上続けられなそうなんだけど、みたいな話になって。

高橋:マネージャーから言われたんだ。

大須賀:二人も当然その場所にはいましたけどね。で、二人の話というか言い分聞くうちに段々と申し訳ないなぁと思って。すまんって謝ったんですよ、全部聞いたその後に。悪かったわ、って言ったらその時二人はもう一回やっぱり続けようってなってくれて。

高橋:あ、そこで辞めようってならなかったんだ。

大須賀:二人はその辞めたいって聞いた時の俺の反応を見てたらしくて。それでもしお前が変わるって言うならいいよみたいな感じになって。ここからは全員腹割ってスタジオとかライブもやろうみたいな話になったんすよね。で、二、三週間ぐらいしてスタジオで新曲作ろうってなったんですけど、メンバー三人の距離感がわけわからない感じになってしまってて。腹を割るどころか、めちゃめちゃ余所余所しい感じになってたんですよ。このままだと続けるのきついし、全然違うーなってなっちゃって。これで続けるのは誰も幸せにならないし、もう一回全部言おうよって言ったら二人からやっぱりやりたいのかよくわからないって言われちゃって。それでって感じですね。でも、言われた当時は正直辞めようと思ってました。

高橋:え、バンドを?

大須賀:そうっすね。今回辞めたベースの彼は後加入だったんですけど、それまでのTeenagerが唄に全く重きを置いてなくて。演奏があってそれに勝手に乗っかるもんだと思ってたんですよ。でも、前のベースが抜けて新しいベースと曲作り始めた時に唄に寄り添うベースラインが凄い良くて。その時に俺の中でのTeenagerのバンド像がガラッと変わったって言うか。ここからはもっとバンドで在りたい、と思ったんですよね。このベースがいるからこの曲があって、このドラムがいるからこの唄があってみたいな。まぁ当たり前なんですけど。やっとなれたっていうか。だから、めちゃめちゃショックだったんですよね。俺はバンドがやりたかったから。だから、仮にドラムが残ってベースの奴だけ抜けたとしても同じぐらいショックだったと思うし。ベースに抜ける時に『お前が居ればメンバー変わってもTeenager Kick Assだよ』って言われたのが結構ショックで。

高橋:それショックだな。言われたら。彼はポジティブな意味で言ったんだろうけど。

大須賀:その一言が決め手に近かったんですよね。やれないなって思ったきっかけと言うか。今でも一人でバンドを名乗るって事の違和感は拭えないし。折り合いも整理もつけられてないですけど、ある意味でその言葉が支えになってるんです。『お前が居ればTeenager Kick Assだ』って言うその言葉が。

高橋:あー、三人でTeenagerだと思ってたものがそう思ってたのかってなったのか。

大須賀:まぁ俺の主観なんでなんとも言えないですけどね。すげー年末に私生活で色々あって。恋愛とか家族の事とかで。その時に二人から辞めたいって話が来て、結構パンチあったんすよ。でもそこからのライブとその前から作ってた音源がすごい良くて。六月ぐらいの企画でベースの奴は正式加入ってなってたけど、俺の中で音源録った時にやっと名実ともに加入したなって感じがあったんですよね。その矢先の出来事だったんで。

高橋:じゃあ、辞めてくメンバーに対してはリスペクトはしてたんだね。

大須賀:俺は!他の二人はわからんすけど。俺ってステージに立つ人間は120%信用してないとダメなんです。だからなんか違うなってなってしまって。なんか俺のインタビューみたいになってるっすね(笑)

高橋:(笑)でも俺らも去年ぐらいに解散の危機あったんだけどね。

大須賀:えまじすか?

高橋:うん。菅野がたまに爆弾投下するんだけど(笑)アイツもそういうモードに入る時があって、LINEでドーンって投下してくるのよ。俺もそれにあ?みたいになっちゃって。まぁでもLINEじゃあ伝わらないから結局会って話そうってなるんだけど。

大須賀:そりゃあまぁでも十年もやってたらそれぐらいあるか…。

高橋:バンド長くやってるとドンドン話す機会も減ってくのよ。プライベートでわざわざ示し合わせて会うとかもしないし。でもそうするとお互いに推測で考えちゃうから。あいつはこういうやつだ、とかね。本当に一回辞めるって話にもなったし。俺はpaioniaやるけどお前やれんの?みたいになっちゃって。

大須賀:ええ。バチバチじゃないすか(笑)

高橋:バチバチだよ(笑)アイツ自身結婚したし、そういう環境の変化とかもあって、本当にpaioniaやれんのかなって思ったし、アイツも俺に対する不信感ってものが割とあって。アイツこそすごくピュアだから。バンドにお前の恋愛事情持ち込むな、みたいなね。ざっくり言うと。俺は俺であ?ってなって(笑)やっぱり腹割って話さないとダメなんだよね。

大須賀:まじか(笑)

高橋:でもさっきの話じゃないけど、ずっとアイツが変わらないでいてくれて。そう言う時にちゃんと爆弾投下してくれるから。お互いにそれを避けようとすると溜まり溜まって本当に終わりだなってところまで行っちゃうから、それは本当に助かるなって思うよ。俺も最初のドラムが抜けるってなった時に、理由として『公務員になりたい』って事で抜けたんだけど。別に喧嘩もしてないし仕方ない事ってわかってたけど、なんか振られたみたいな気持ちになっちゃって。凄い失恋と似てたんだよね。うわー凄いショックだって思っちゃった。

大須賀:そうなんすよ。失恋なんですよあれも一種の。俺2人から同時に振られてますからね(笑)自分の存在全否定されたっていうか。

高橋:確かにそれはキツイなー!でも、オオスカ君と同じ熱量がある人、そーいう人が付いてくると思うな。

大須賀:まぁ本当はそれがバンドって言うか。勇成さんのこだわりも菅野さんのこだわりも全く同じものではないし、ベクトルも違うけれど、それをお互いが認め合って、それが混ざり合って行くものが本当に良いって言うか。

高橋:そう。それが良いんだよね。

大須賀:出来た時、得体の知れないって言うか。勇成さんの曲だけど、そこに他の、例えば菅野さんの詩なりベースなりが乗っかってわけわからなくなる。でも俺の、勇成さんの曲なんですよ確かに。

高橋:うん。そうだね。昔は曲作ったらドラムもベースも全部作ってメンバーに渡してたけど、今は弾き語りの音源渡すだけだもんな。アレンジとか全然考えてない。全員に任せる。

大須賀:最近のpaioniaは柔らかくなったなってイメージ、縦横無尽というか。

高橋:そうだねー。昔は本当にガチガチだったからなぁ。

大須賀:柔らかさとかで言うと、ニトロデイのやぎちゃんと[BOY]で話した時に、彼女自身尊敬するバンドにbedをあげてて。彼女は優しさや情愛が源流のバンドに憧れがあるんですよ。でも、まだ自分にはそれは出来ないとも感じてたらしくて。素直に情愛とか表すより、今はまだ怒りでライブをしちゃう。それにまた怒っちゃうみたいな。その気持ち凄くわかるんですよね。paioniaのような素直な愛情はまだ素直に出せない。めちゃくちゃ羨ましいですよ。

高橋:いやまだ二十一でしょ。全然これから変わってくんだよ。

大須賀:そうだと良いんですけど…(笑)

高橋:まぁでも、それが取り柄みたいなところもあるから。素直さというか。理想を追い求めてるよね。俺らも素直で、それが音楽としてビジネスとして成功するっていう。それをやろうとしてるから。いつまでやるんだろうね本当(笑)

大須賀:いつまでもやって欲しいですけど(笑)

高橋:俺、音楽って簡単に辞められると思うんだよね。自分が素直にやれなくなったとしたら。そしたら、清掃員でもなんでもやって生涯を終えると思う。

大須賀:おお。まぁ確かにpaioniaが辞めるってなる時ってそういう時なんだろうなと思います。素直に音楽が作れなくなった時が終着点っていうか。

高橋:そうだね。素直に音楽が作れなくなったら辞める、そこが終着地点だと思う。

 

paionia

高橋勇成(Gt&Vo)
菅野岳大(Ba&Vo)

福島県で生まれ育った高橋勇成(Vo/Gt)と菅野岳大(Ba)が中心となり、

2008年にパイオニアを結成。そのバンド名はゆらゆら帝国の曲名に由来するらしい。
2011年11月、バンド表記をパイオニアからpaioniaに改名。
2012年3月、ファーストミニアルバム「さようならパイオニア」をDAIZAWA RECORDSから
リリース。同時に、VA「代沢時代 ~Decade of Daizawa Days~」にも参加。
同年9月、福島県の猪苗代湖で開催された【風とロック芋煮会2012】に出演。
2013年12月、セカンドミニアルバム「rutsubo」をDAIZAWA RECORDSからリリース。
2015年6月、第二期paionia終了。尾瀬松島(Dr.)が脱退し、高橋、菅野の二人で活動再開。
2016年3月、サポートドラマーに中村一太(ex.the cabs、Plenty)を迎え、ライブ活動再開。
2017年11月、枚数限定1st single「正直者はすぐに死ぬ」をgspよりリリース。
2018年6月、1st Full Album「白書」をgspよりリリース。
同年8月、FUJI ROCK FESTIVAL’18「ROOKIE A GO GO」へ出演。

Official Site:https://www.paionia.info

twitter:https://twitter.com/paionia_band

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